導きの声

いかにも剣士と言わんばかりの身なりをした金髪の高身長若者と、

町内で一番剣の腕に自信がある青年が剣を交じらせている。



ガキンッ!キィンッ!



「ぐぅ⋯っ!」


「ふっ、どうだ?まだまだこっちは余裕だぜ」



金髪の高身長若者の方が、

圧倒的に剣の腕が上であることは、

素人であるリオナの目から見ても一目瞭然だった。



(う、うわ⋯ぁ⋯!す、すごい⋯!

あの金髪のお兄さん、動きがすごく速いんだけど⋯!?

それに、背が高くてイケメン⋯!!!)



そう、この金髪高身長イケメン剣士こそ、

リコル海賊団の一員であるカイだ。

後々、

リオナと深く関わっていくことなる。


そして、

リコル海賊団のメンバーは他にもいた。



「カイー!頑張れー!」


「カイ!分かってんだろうな!?

今日の食料はお前の優勝にかかってるんだからな!」


「あんまり目立ち過ぎんなよ?」



このリングの外側からカイを応援しているこの若者3人組だ。


一見、身なりはどこにでもいるような若者らしき格好をしている彼らだが、

彼らもリコル海賊団のメンバーである。


まず、1人ずつ紹介していこう。


身長160㎝という小柄体型に、

やや明るめオレンジ茶髪の短髪が特徴な爽やか好青年が、剣士見習いのナギサ。


次に、ガンナー(狙撃手&砲撃手)のレオ。

ツーブロックありの短髪は落ち着いたワインレッドブラウンカラーで、

身長は標準的な175㎝。

鎖骨から右腕にかけて入っている竜のタトゥーがトレードマークだ。


3人目がエイジ。

航海士&通訳担当を担っている。

身長177㎝で漆黒のオールバックヘアースタイルが特徴な彼は、

元々口数や表情の変化が少ないことからクールな印象と見受けられるが、

無愛想と勘違いされがちである。


海上にいる時は各々自分達の普段着、つまり海賊着姿で過ごしているのだが、

陸に上がる時や町に繰り出す時は自分達が海賊であることを隠すために、

彼らはこうして一般市民の姿に着替えて出かけているというわけだ。



さて、ストーリーに戻ろう。



「言われなくともこの勝負、俺がもらってやる!」



カイの俊敏な動きと剣さばきにより、

勝負がつくのに時間はかからなかった。



カキーンッ!



「ぐわあっ!」



怯んだ青年の手から剣が弾くようにして離れ落ち、

また青年も同時に尻餅をつく。


大きな歓声と拍手が上がったのはその直後だ。



「勝者はエントリーNo.68、カイだぁぁぁ!」


「「おおおーーーっ!!!」



(すごい、すごい、すごい⋯っ!

まるで、

風みたいだったよ⋯っ!?)



空いた口が塞がらない状態のリオナも、

他の観客達同様、つられて拍手をせずにはいられなかった。



「ふっ、余裕だったな」



得意げに軽く口角を上げたカイと、

リオナの視線がふっと合ったのはこの時である。



「⋯あっ⋯」


「ん?」


「⋯っ⋯!」



何故だかは分からない。


反射的にボボボッと赤面したリオナは、

その場から逃げるようにそそくさと駆け出していた。



(何だ?今の女。変な奴)



これが、

カイのリオナに対する第一印象だったと言えるだろう。



「はあ⋯。

ビックリしただけにしても、

私ってば何で、

逃げるようにして飛び出しちゃったんだろう⋯。

ただ、目が合っただけなのに⋯」



退散するように格闘技場広場を後にしたリオナは、

人が行き交う通り道をトボトボと歩きながら、

これで何回目になるか分からない溜息を漏らす。



(それにしても、

あの金髪のお兄さん、

剣の扱い方上手で強かった上に、かっこよかったなぁ⋯)



自身の頬に再び熱がじんわりと戻ってきたため、

両手を添えずにはいられなかった。



「きゃっ!」


「おっと」



リオナがカイのことを思い出しながら歩いていたせいか、

前方から歩いて来た通行人とドンッとぶつかったようだ。

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