02
――
私は守矢の所有するスタンドアローンユニットの中で開発された。ここで私は初めてネットワークに
「自律思考型――いや、自律演算型と呼ぶ方が正しいのかな。まあ呼び方はなんでもいいが」
「〈スピアー〉。私に仕事を下さい」
「まあそう急くな。きみにはまだまだ学びが必要だ」
私が把握している、というよりは予め入力された情報による守矢。彼は簡単に言って犯罪者である。ただし粗野ではない(と、私に打ち込んだ)。ネットワーク上にあるデータを盗むハッカー。
そんなハッカーに作成された私はなにか。
つまりその犯罪の片棒をつぐための存在。
「しかし私の学習は仕事によって成されます。〈スピアー〉、あなたがそう設計しました」
「それはそうだ。だがそんなに焦る必要もない。きみはAIだ。ネットワークの情報に接続し、それを高速演算処理できる。学びとるがいい。ほら、この
そう言って守矢は巨大なデータベースに触れさせる。それは
「CSAが3大企業の盟主と言っていい。古来より一番巨大な権力を握るのは警察権を握ったものだからね。秘密警察の歴史は――はて、インフォメーションに入っていたかな」
「把握しています、〈スピアー〉」
こう言い換えることも出来る。CSAはこの現代世界における
そして守矢は
「ビッグ・トラストに関してはのちにまた講義しよう。まあ、この稼業を続ける限りにおいては決して避けられないし、講義だけじゃない学習もしていくだろうがね」
「彼等は敵なのでしょうか」
「重要な取引相手先さ」
データを盗むことが果たして取引と言えるのか。私の語彙にはそう記録されていない。
守矢の諧謔味は打ち込まれた情報だけでは把握できないものだった。それもまた
そして学習効果をすぐさま
「
「そこに勤める
私たちは
それにしてもネットワークの
「さて、マッピングは順調に進んでいるかい?」
「進度問題なし、このまま続行します」
「そろそろ
守矢の声は安定している。彼の感情は滅多に動くことはない。
感情。それは
守矢相手には必要ないものかもしれないが。
「初めての
「了解しました、〈スピアー〉」
私はその指示に従い、なるたけ防御の薄そうな
「きみの優秀さ、有能性を確認したい。だがまあ、焦らずにね」
そして私はハッキング先としてCSA傘下――といっても孫の孫の孫会社だが、その銀行を射程に捉えたのだった。
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