第19話

 必死に駆け寄って、メビウスの息を確認する。


「良かった、生きてる。」


 だけれど、目の前には敵がいて、でも、メビウスを置いて

逃げる訳にもいかない。


 正直言って、ピンチだ。

 

 だけども。


「負けないよ。

私は!」


 メビウスを抱えて、低空で飛び立ち

攻撃をよけ続ける。


 何故そうするかは分からない。

 だけど、私の心はこう言っている、

メビウスを死なせてはならないと。


 だがメビウスを、いや、装備を纏った一人の人間を

抱えながら飛行するのに、限界があったのか。

 地面へと派手に墜落してしまう。


「まだ、まだ!」


 ライフルを撃ち、シャドウジャイアントに抵抗する。


 だが、相手は姿を影に変える事の出来る巨人。


 攻撃が当たるはずもなく、徐々に追い詰められていく。


「、、、こないで!」


 そう言った瞬間、腕を振り下ろす巨大な影の後ろで

何かが見えた気がした。



「目を閉じてな!

ソルミサイル、行くぜ!」


「凍てつけ、アイスブレス!」


 眩い、幾つもの

太陽のような閃光が空から地面を照らし、

それと同時に、地面ごと凍結させるような致命的な冷気が

シャドウジャイアント向かって放たれ、動きを止めさせる。


「冥府の門、現着。

青の死神は、、、。」

 複雑そうな表情で、リーダーらしき少年が

倒れているメビウスを、苦しそうに見る。


「倒れてる、けど。

死んじゃいないか。」

「「タウ、気を付けろ

こいつがやられてるってことは、、、。」」


 もう一人の声が、リーダーらしき少年の中から発せられる。


「分かってる。」


 ふう、と息を纏めるとタウと呼ばれた

リーダーらしき少年は、拳を構える。


「変わるぞ、シグマ!」


「「おう!

最初から全力、ってなぁ!

クロックアップ!」」


 言葉と共に、タウ、もしくはシグマと呼ばれた

少年の動きが、弾丸のように加速する。


 そして、凍っていたシャドウジャイアントに接触したと

思った次の瞬間に、何本もの伸びていた触手のような

腕が、次々に砕け散っていく。


 シャドウジャイアントが、影の中に潜ろうとするが

それは出来ない。

 何故なら、真上に射出された幾つもの

ソルミサイルの効果によって、

周囲の影は、炙り出されてしまっているからだ。


「「トドメ頼んだぜ、イータ!」」

 シグマがそう言うと同時に、先に、ソルミサイルを放った少年が

ビルから飛び降り様に、炎を纏った剣を振り下ろす。


「これで、終いだ!」

 両断、とまではいかずとも致命的なダメージを負った

シャドウジャイアントは、地面へと倒れ伏し

動かなくなる。


「任務、完了っと。」


「あの、あなたたちは?」


 レミエルが、恐る恐る3人へとそう聞くと

タウはこう答えた。


「青の死神直属の戦闘部隊、冥府の門だ。

よろしくな、レミエル。」

そう言い、タウはレミエルに手を刺し伸ばした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る