第9話

 思い出す。


「よっ、メビウス。」


 帰還後、少し休んでいる自分の元に

識別コード02、サンライトがやってきた。


「、、、サンライトか。」

 ぶっきらぼうに、メビウスがそう答えると

チャラチャラした様子でサンライトはこう言った。


「つれねぇ奴だなぁ。

一応俺は先輩なんだぞ?」


 そんなサンライトの言葉を無視し、メビウスは問いかける。


「要件は?」


 サンライトは顔に浮かんでいた

先までちゃらちゃらしていた表情を消しさり

代わりに、険しい表情で

そして低い声で、メビウスへとこう言った。


「03、キョクヤ。

03-01、ヨイヤミ。

両名がやられた。」


 衝撃が走った。


 いや、衝撃が走ったなんて生易しいものじゃない。

 雷に打たれたような、そんな衝撃。

 それが、今全身を駆け巡ったのだ。


 少し震えた声で、メビウスはサンライトに問いかける。

「ナンバーズが、やられた?」


 珍しく慌てる様子のメビウスを見て

サンライトは少し意外そうにする。


 が、すぐに様子を戻して

こう続けた。


「まぁ、やられたって言うより

安否不明、って言った方が正しいかもな。」


 間髪入れずに、メビウスはサンライトへと聞く。

「安否不明?」


「マリオネッター、って知ってるか?」


 聞いたことがある。


「幻種のデモンズ、危険度は確か暗闇

だったはず、それが?」


 サンライトは、メビウスの端末にデータを送ると

こう言った。


「そいつの能力は、肉体接触での操り人形化。

だったんだが、何か知らで強化されたんだろうな。

遠隔による精神浸食によって、操り人形化させる

能力を取得したんだと。」


「それに、キョクヤ達がやられた?」

 信じられないような様子で、メビウスは

サンライトに問いかける。


 するとサンライトは、こう答える。

「まぁ、出撃前に

とんでもないケンカしてたからな、あの二人。

それが原因とは思いたくないが

それが原因だろうな。」


 ため息交じりにそういうサンライトに

メビウスは問いかけた。

「一度操られた人間を、救助できるのか?」


「普通だったら救助できるんだが。

今回は強化種相手だし

何より相手には、現ナンバーズだ。

とてもじゃないが、殺さない様に手加減しながら

救助なんて、手に負えるもんじゃないな。」


 サンライトは深いため息をつく。


「はぁ、、、俺が出撃できればなぁ。」


 そのサンライトの言葉に、メビウスは首を傾げる。


「あれ、言ってなかったか?

今回、民間人も人質に取られてるってことで

俺は不向きだ。

だから俺は、

連鎖して他の脅威が出ない様に、監視任務ってとこだな。」


 まぁ、理由としては納得できる。


 サンライトの能力、および守護天使は

広域探知、及び広域戦闘能力に長けている。


 フルスペックを発揮できるのが広域戦闘ならば、

人質を取られた状態で行われる戦闘で

求められる精密攻撃では、サンライトの得意戦闘状況と

合致しなさすぎる。


 それに、今手の空いているナンバーズは

俺か、02サンライト、04のラグナロクだけだ。

その中だったら、俺が適任だろう。


「分かった、俺が出る。」


 メビウスのその言葉に、少しサンライトは苦い表情をする。

が、直後何かを思い出したようにこう言った。


「イージスを待ってから、合同作戦はどうだ?」


 間髪入れず、メビウスが返す。

「駄目だ。

きっと、それじゃ遅すぎる。」


そう言い残し、メビウスはその場から去って行った。

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