ウロボロスワールド─Age of Aviation─
低生下衆《ひくき げっしゅう》
第1話
※注意、拙作〝ウロボロスワールド─Age of Exploration─〟を先にお読みください。地続きの世界観となっておりますので、そちらを読んだ方がおそらく世界観をより理解できます。
─────
走って逃げて、神様の汗と涙で〝ぺっちゃんこな惑星〟が満たされてから幾霜月。
いつの間にか神様は真っ暗な世界で〝ぺっちゃんこな惑星〟の崩壊が早くなっている事に気づきました。
焦った神様は1番崩れる場所に、大きな大きな壁を作って崩壊を止めました。
それでも、崩壊は止まりません。力を使いすぎて疲れきった神様は、遂には〝バタンキュぅ〟──とうとう女神様達に追いつかれました。
ハアハア、ゼェゼェ……──息も絶え絶えな女神様達は神様を問いただしました。
〝何故逃げるのか〟〝嫌いになったのか?〟〝2人なのを隠していて、ごめんなさい〟
神様も答えました。
〝2人なのに驚いた〟〝プレゼントを壊してしまって、焦って逃げた〟〝2人とも美しい〟
そうやって、会話を重ねて、やっと仲直りした神様達は真っ暗な世界と、崩壊する〝ぺっちゃんこな惑星〟に困り果てました。もう元の場所はわかりません。ただ、壁まで作った不格好で〝ぺっちゃんこな惑星〟でも女神様達は一向に構いませんでした。なんと言っても神様からの初めての贈り物だったのですから。
神様達は相談して決めました。
半日は神様が〝ぺっちゃんこな惑星〟を照らして見守り、もう半日は1人の女神様が淡く照らして見守る事を──そして、1人の女神様が見守っている間に、隠されたもう1人の女神様と神様は真っ暗な世界を一緒に明るく照らすのです。
けれど、やっぱり女神様達は偶に赤くなってしまいます。流石の神様とて、2人の女神様を平等に愛する事は難しかったのですから。
それでも仲良く浮かれる神様達に呼応するように〝ぺっちゃんこな惑星〟も次第に大地が隆起し、空が広がりました。そんな世界を神様達は今日も優しく見守っています。いつまでも、いつまでも──
──創世絵巻 2章 神様達の仲直りと、浮かれる世界──
────
──ガッシャーン!!
男が振り下ろした瓶が粉々に砕けて瓶に入った液体と共に、少年の額から真っ赤な血が零れ落ちた。
「おい、フィーナ!!ヤッてる最中に止めに来るなんざ、ガキの躾がなってねえんじゃねえか?」
「ご、ごめんなさい。いつもは離れの小屋で他の子達と寝ているはずなのに…」
「ハッ…おいクソガキ!俺はなっ!お前の母ちゃんを虐めてるんじゃねえ。喜ばせてんのよ」
男はフィーナの肩を掴みながら強引に胸元に引き寄せる。
「やっ……ゲイツっ!シオン、あなたは離れに戻ってなさい」
「おいおい、フィーナ。そんな勿体ねえ!せっかくだから息子に見せつけてやろうぜ、お前が虐められて悦ぶ変態女だってな!」
「キャッ!」
そう言ってケダモノのようにゲイツがフィーナに覆いかぶさり、無理やり押し倒す。
フィーナの拒否は徐々に弱くなり、いつの間にかフィーナはゲイツを悦ばせるように喘いだ。まるで少年の存在などなかったように2人は夢中になって激しく
──なんだコレ、痛い、痒い、痛い、カユイッ、イタイッ!
シオンの額の傷が瓶の液体・・・ポーションの効果により治癒されて行く最中、シオンは
──日本……過労……精神病……ニート……自殺……なにこれ、ナニコレ、知らない……知らない!
──僕は──俺は誰だっ!
頭が割れるような頭痛の中、シオンは気を失った。そして、それから一時してゲイツとフィーナはそれに気づくことなく一緒に果てた。
窓から室内を青白く照らす重なった双月は、彼らの特異な状況を知ることもなく──事も無げに佇んだ。
時は蒼月歴555年 春の刻 。
北伐帝国 首都艦ブラックホエール号内 。
ピンク層 アンダー地区 一目惚れ道り。
いちご亭2F 1の部屋での事である。
─────
「まったく、酷い目にあった……失せ物探しもそろそろ潮時かあ……」
あの日、5歳のシオン──俺が前世ともいうべき1人の男の走馬灯を体験した日からおよそ2年の時が流れた。
最初の1年間は前世と今世の統合とその齟齬に悩まされた。俺は時たま訳の分からない妄言を垂れ流しながらも、なんとか今世に適用しようと生きていた。
母であるフィーナにはあの事件以来、頭が可笑しくなったのかと若干哀れまれながらも、なんとか娼館いちご亭の丁雑見習い兼預かり子として過ごして来た訳だが、とうとう転機が訪れた。
「よう、フィーナ!とうとう遺跡潜りで一山あててよう、ついに俺も船持ちの
およそ1年前。目の前で今世の母と乳繰り合いを見せつけ、あまつさえ俺に前世らしき男の走馬灯を見せた原因であろう
──
ご機嫌に一山当てたクソバカヤリチンドS船乗りのゲイツが、今世の母であるフィーナを身請けに来た。
で、選択する事になったわけだ。母と一緒にこのクソバカヤリチンドS船乗りのゲイツの船に母と一緒に乗るか此処に残るか。そして、此処に残るにしてもどうするのかを……
「ねえ、シオン。イルカ乗りの3分の1は引退まで生きられないって言われるわ。ママとしてはシオンにはいちご亭に残って、安全に生きて欲しいの。女将さんもシオンの事を気に入ってるし、もしかしたらいちご亭を継ぐことだって出来るかもしれないもの」
「はあっ!?継ぐってどうやって?」
「あら、ミアちゃんよ。ミアちゃん、この前シオンと結婚するって言ってたわよ?」
「ミアって……そりゃミアは可愛いし好きだけど、妹みたいなもんだよ。それにママ……実は俺やってみたい事があるんだ」
「シオン、やってみたい事ってなにかしら?」
「探索者だよ。まずはハンターフィッシュを目指して、遺跡を漁って空船を見つけて団を結成して船長になるっ!」
「ハァ〜ハッハッハ!黙って聞いてりゃ安全でも北伐軍でもなくて探索者だとっ!シオンちゃんよぉ、探索者の5割は最初の1年で死んじまう。なにより6歳のメダカちゃんじゃ、ギルドに登録も出来ねえよ。まあ、財宝漁りに成功した俺を見て夢を見ちゃったのかもしれねえけどよ、やめとけやめとけ」
「うっさい、クソバカゲイツ!12歳までギルドに登録出来ないのなんて常識だろ。俺は未鑑定品を子供に投げつけるバカとは違うっ!こっちだよこっち!」
そう言ってシオンはパンフレットを投げつけた。
「ふぅん、探索者学校ねえ・・・まあ、悪くはねえ選択か」
「おう、寮もあるし孤児になったら支援制度も使える。でも、学費と寮費とお小遣いはお前が出せよな、ゲイツ」
「ハァッ!?なんで俺がっ!!」
「なんでって、支援制度使ったら将来的に探索者としてあげた利益の10%を毟り取られるじゃん。なにより、今回は俺のアドバイス通りやって、財宝漁りに成功したんだろ。正直、そのぐらいして貰って当然だと思う。まあ、またアドバイスして欲しかったら甲斐性みせてみろやボケ」
「チッ……たった1回当たりを引き当てただけで偉そうにしやがって……まあ、験担ぎも重要か。最下層の学校ならそんなに金は掛からねえし、しゃあねえか」
「ねえ、ちょっと待ってシオン、ゲイツ……アドバイスって何?ママ聞いてないけど?それに、ママとしてはシオンに危ない事はして欲しくないんだけどな〜?」
「ママ……アドバイスはただの未探索の遺跡がある場所の予測だよ。北伐軍のお客さんの話とか聞いて予想したやつ。それに、危ない事ってブラックホエール号だっていつまで無事かわかんないじゃん。去年のブラッドムーンでクジラ級の超大型艦が沈んだって皆で大騒ぎしてたし、いざと言う時のためにも最低でも免許ぐらい持っときたい」
「でも、あれは救南王国の艦船じゃない。北伐隊に守られてる私達のブラックホエール号とは安全度が違うわっ!」
結局、議論の末になんとかフィーナを説得して、最終的にはブラックホエール号の最下層──ブラック層ミドル地区にある探索者学校幼年部の寮に入る事になった。
で、無事に寮生になった俺はシオンに与えられた恩恵【検索エンジン】を使って、真面目にお勉強しながら、1年の間──悠悠自適に過ごしてたワケだが困った事に最近ちょっとトラブった。
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という事で、カクヨムネクスト賞狙いで短編小説で投稿です。こんなんでいいかわかりませんが、続きが読みたいと思われた方はフォローと☆3を宜しくお願いします。
世界観としては拙作【ウロボロスワールド─Age of Exploration─】の後の時代の話です。あちらは海洋ロマンでこちらは航空ロマンとなります。こちらの方がはっちゃけて書けそうな気がします。
ウロボロスワールド─Age of Aviation─ 低生下衆《ひくき げっしゅう》 @hi-key
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