この物語は、誰かをただ救うというより、そっと寄り添ってくれる作品だと感じました。前に進むことよりも、食べること、眠ること、身の回りを整えること。そうした小さな行為が、ちゃんと力になる、そんな世界が描かれています。
九条先輩の存在がとても印象的です。
導く立場にありながら、踏み込みすぎず、いつも少し距離を保っている。その距離感が、ちょうどよく心地いいです。守ることと、見守ることの意味が描かれています。
妖や影の描写には怖さもありますが、どこかナチュラルで静かな印象です。その分、主人公の心の揺れや回復が自然に伝わってきました。何かが劇的に変わるわけではないけれど、少しだけ世界が自分に近づいてくる、そんな読後感のある作品でした。