第一章
第一話 作戦会議1
机の下でスマホをスワイプし、ロックを解除した。 画面には、すでに通知が溜まっている。
うちのクラスには2つのクラスラインがある。
一つは、クラス全員入っていて、あまり動いていないもの。
もう一つが、ヘタレな天堂花園cpを見守るために作られた、総勢15名の保護者会だ。
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青春回収作戦本部(15)
本日13:12
菊池『待って!?』13:12
菊池『今の会話聞いた!?』13:12
菊池『これは卵焼きですって何!?』13:12
菊池『全米が泣くレベルで会話が下手!』13:12
菊池(泣いているパンダのスタンプ)13:13
真中『菊池。うるさい。』13:13
真中『なんで20秒で4つもメッセージ送れるんだよ。』13:13
目黒『今、タコさんウインナー持って天堂があたふたしてる。』13:13
目黒『菊池がうるさいのは同感。』13:13
菊池『目黒っちまで!?』13:13
菊池(泣いてる猫のスタンプ)13:13
君塚『相変わらず君等はさわがしいねぇ。』13:14
菊池『目黒っち懲役30分。』13:14
目黒『放課後クレープ奢るから許して』13:18
真中『お前らは気楽でいいなぁ!?俺は今にも胃に穴が飽きそうだよ。隣の席のギクシャクした空気のせいで焼きそばパンの味がしない。』13:18
菊池(喜ぶパンダのスタンプ)13:18
菊池『やったー!目黒っち優し〜!』13:18
真中『誰か聞いておいてくれよ…』13:21
君塚『真中。ど…どんまい』13:22
音谷『今の空気感を曲にしてみた。』13:22
音谷『不協和音とラッパを混ぜた感じ。』13:22
音谷『タイトル 無題』13:23
音谷(音声データ0:16)13:23
真中『聞かねえよ。そして君塚は同情しなくていい。虚しくなってくるから。』13:16
宝田『あら。』13:25
宝田『なら、わたくしがスタッフを呼んで無理やり二人っきりの状況を作り出しましょうか?』13:26
真中『そこまでしなくていい。』13:27
真中『宝田は金で解決しようとするな。音谷はBGMを作るな。』13:27
真中『話が進まないから整理するぞ。』13:28
真中『俺たちの目的は二人が自然にくっついてもらうことだ。』13:28
真中『派手なことやってバレたら意味がない。……で、誰か現状打破の案はあるか?』13:29
菊池『あるわけないじゃん!!』13:29
菊池『だってもう来週は席替えだよ!?』13:29
菊池『今の席だってそこそこ近いのにこのザマだよ!? 離れ離れになったら終わりじゃん!!』13:29
目黒『いいこと思いついた』13:30
目黒『作戦名、「オペレーション・隣の席へようこそ」。』13:30
真中『お前、もう名前つけてたのかよ。』13:30
目黒『細工済みのくじ引き箱を用意して、二人にそれを引かせよう。』13:30
菊池『 さすが目黒っち!あったまいぃ〜!』13:31
菊池『配置はどうするの!? 完全密室!? 前後挟み撃ち!?』13:31
真中『現実的にむずくね!?』13:32
真中『まあ、とりあえずその方向で動くぞ。』13:32
君塚『こんな大掛かりなの初めてだなぁ…』13:33
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スマホを伏せ、俺は顔を上げた。
視線の先で、信也と姫花はまだお互いの弁当箱の角を見つめてモジモジしている。どうやら「ごちそうさま」を言うタイミングすら見失っているらしい。
――まったく。 どいつもこいつも、クセが強すぎる。
俺は深くため息をついた。 こんな連中をまとめて、あのポンコツ二人をゴールインさせる? 前途は多難どころの話じゃない。
キーンコーンカーンコーン……。 予鈴が鳴り響く。
「あ、あのっ、信也くん! ごちそうさまでした!」 「う、うん! 午後も……授業、頑張ろうね!」 「は、はいっ! お気をつけて!」
お気をつけてって何だ。席に戻るだけだぞ。
顔を真っ赤にしてペコペコと頭を下げ合う二人を見ながら、俺は頭を抱えた。
頼むから、俺の胃に穴が空く前にくっついてくれ。
俺は最後一口分の焼きそばパンを口に押し込み、これからの苦労を思って遠い目をしたのだった。
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