元第五王子は歌をつむぐ
桜彩 るり音 (元、桜庭ミオ)
第一話 満月
白銀色の髪と水色の瞳を持つ少年――ルノは鉄の鍵を回し、窓をわずかに開けた。月の光が強くなる。
鉄格子の向こうから、ひんやりとした夜風が塔の中に入り込み、冬の匂いが広がった。
どれくらいの時を塔で過ごしているのか覚えてないが、いつからかルノは革靴を履かなくなった。絨毯が敷かれているのもあるけれど、籠の鳥の自分が歩ける範囲なんて限られているのだし、
ルノは満月に語りかけるように歌い始める。それは、かつて踊り子だった母が教えてくれた歌。
その歌は、月に向かって愛しい人の幸せを願う、物語の主人公の祈りが込められたものだった。
☆
ルノの母は大陸の出身だった。彼女が旅団と共にこの島に来た時に、ダーラ王国の王――ルノの父に、見初められたと聞いている。
この島の王族は太陽神の末裔と言われている。王の血を引く者は、金色の髪と瞳を持って生まれるのだ。
ルノは今、十二歳で、五番目の王子なのだが、異国の踊り子の息子だということで、他の王子や王女から避けられていた。
城に居場所がないルノはよく一人で城を抜け出した。護衛を置いて。
だけど護衛はルノの母に報告しなかった。
ルノの婚約者もそうだが、ルノのことが好きで関わってくれているわけではない。ルノが王の血を引いているから関わりがあるだけで、ルノに興味がないことを彼は知っていた。
城のそばには町があり、たくさんの人であふれていた。平民に会うとルノの髪と瞳の色のせいか、泣きながら拝む人がいて面倒だった。
町を避けるように進むと森があり、その奥に高い塔がそびえている。
『お前が悪いことをしたら、あの塔に連れて行かれるんだぞ』
他の王子達は、ルノを見ながら
森の中にある塔は、罪を犯した王族や貴族が幽閉されるための場所だった。
今は誰もいないはずだが、夜な夜な泣いているような声が聞こえるという噂があり、人々に恐れられている。
恐ろしいと感じたルノは塔には近づかず、森にある湖に向かった。
森には狼がいるが、太陽神の末裔である王族には近づかないと教えられている。だから怖くなかった。
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