神崎蒼太が抱える問題は、怒りをうまくコントロールできないこと。
ある日、彼は夢の中で不思議な診療所へと迷い込みます。
そこで出会った女性によって、彼は変わってゆくことになるのです。
本作は〝アンガーマネジメント〟の考え方で人生が変わる主人公をファンタジーの世界や恋愛を絡めて描いた物語です。
〝怒りのピークは6秒〟〝「べき」という思い込み〟〝手元の感覚へ意識を向ける〟などの〝アンガーマネジメント〟の要素が作中には、自然に織り込まれているのです。
蒼太へ怒りとの向き合い方を語るのは、夢の先にある〝黄昏の診療所〟のエルフ、セレン。
彼女は助けたり導いたりはせず、ただ蒼太の悩みを聞き、隣で語りかけます。
「私はあなたを助けません」
蒼太を助けられるのは、自分自身だけだというのです。
彼女のその言葉は、蒼太へ自助を促し、依存を生まないためのもの。
人間関係に苦い過去を持つ彼女だからこその優しさであり、寄り添いながら伴走する真摯な姿勢でもありました。
物語の進行とともに蒼太は理解します。
怒りは押し込めるものでも敵でもなく、自分の一部として受け入れるもの。
セレンから言われたことを少しずつ実践し、〝知っている〟と〝できる〟の間を埋めながら成長していく蒼太の姿が、本作の大きな魅力です。
多くの場合、読み出した当初は作品の持つユニークな要素の組み合わせに注意が向くことと思われます。
しかし、読み進めるうちにいつの間にか怒りも愛しさも、すべては人が持つ自然な感情であり、それを受け入れて適切に表すことが、大切なのだと理解することでしょう。
この物語は、そんな優しい知恵に溢れた作品なのです。
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