脳破壊がお好きでしょう?
古人
さぁ、跪け
目の前で丸上の愛していた義妹たちが俺の大嫌いな男、岩屋に犯されている。それを見ていることしか出来ない歯痒さに丸上は血の味を感じる程に歯を喰いしばり……不意に状況が俯瞰的に見え始めた。
(……ッッ!)
そこからの意識の浮上は早かった。丸上の精神に今の丸上、丸上清明が知り得ない情報を知った別人格が乗り移ったことを丸上は自覚する。
(何だ? 俺は一体……?)
色々と疑問が生まれて極度の混乱状態に陥る丸上。そんな主の状況に気付いた彼の忠実な僕であるエマが叫ぶ。
「主様! お気を確かに!」
「ふん、稀代の黒魔術師もこうなれば形無しだなぁ? 丸上。言っておくが、お前の義妹は望んで俺に抱かれている……のは、この痴態を見れば明らかか」
「岩屋……! 主様に一度見逃していただいた分際で! 今すぐ殺してやる……!」
「おぉ怖い怖い。だが、まだ俺は死にたくないからなぁ……念のため、保険をかけておいたよ」
丸上が混乱している間にエマが勝手に岩屋と会話を進める。丸上がそう言えば今の俺は黒魔術師だからこいつを無惨に殺せるなと思ったが、魔力を扱った時点で岩屋は即座にどこぞのご隠居様の印籠のようにスマホを掲げて操作した。
「それは……っ!」
エマが忌々し気に睨むその先には複製画面に投影された義妹たち、茉莉と理沙が見知らぬ男たちの前であられもない姿を晒している映像があった。それを見せて岩屋は勝ち誇ったように笑う。
「丸上ぃ。お前の可愛い義妹たちの馬鹿みたいな痴態だよ。俺が一定時間内にパスを入力しないと貴様の可愛い可愛い義妹たちの顔がモザイクなしで自動的に動画サイトにアップロードされるように設定している」
「卑劣な……!」
「ふん。何とでも言え。丸上、顔を上げる力すら残っていないお前にもお情けで一つ動画を見せてやる」
そう言って岩屋は理沙に目配せして彼女のスマホから丸上のスマホにリンクを一つ送らせる。エマの嫌悪する眼差しを受けながらも丸上の方を警戒し続ける岩屋だが、彼は丸上がサイトを確認することもなく項垂れているだけであるのを見て勝者の笑みを浮かべながら吐き捨てた。
「ふん。守れなかったことを後悔しながら自分を慰めるといい」
「下衆め……今すぐ殺してやる……!」
「持たざる者は頭を巡らせないと何も得られないんでね……だが、あまりに恨まれて貴様を追い詰めると後が怖い。だから交渉と行こうじゃないか」
「……交渉?」
突如岩屋から告げられた言葉にエマは警戒しながら声を返す。それに対し、岩屋はこともなさげに言った。
「あぁ。丸上、お前の使い魔……最良の使い魔であるエマを一週間、俺に貸せ」
「なっ……」
絶句するエマに岩屋は下卑た笑いを浮かべながら丸上に告げる。混乱の最中にある丸上だが、彼の表情は彼の意識が蘇るまでの絶望した状態のままだ。それを見てエマは縋るように丸上を呼ぶ。
「主様……」
「エマ……」
「あぁぁぁああぁぁぁっっっ!」
静寂を裂くように先程の褒美として犯されていた理沙が絶頂を迎えて叫ぶ。それにより丸上の前人格の欠片が悲痛な断末魔を叫んで消えて行った。その感情の波で丸上は涙を流す。
それを見てエマはやや逡巡したものの、やがて丸上の頬に手を添えて優しく微笑んだ。
「……私にお任せください」
「エマ……待ってくれ」
「大丈夫です。たったの一週間ですから」
儚く微笑むエマ。しかし、その頃には丸上の前人格は既に死んでいた。今の丸上は過去の丸上の感情を引き継いではいたが、意識までは引き摺られていない。そのため岩屋と交渉する程度には冷静さを取り戻していた。
「いや、ホントにちょっと待ってくれ。岩屋、こんなに大事なことを急に決めろと言われても困る。一週間待ってくれ」
「ふん。惰弱な……今すぐ決めろ」
「じゃあ死ね」
「まっ……」
予想外の展開に岩屋は目を見開いた。
「待て待て! お前、お前の家族がどうなってもいいのか⁉」
「よくないが? だが、もうこうなればやぶれかぶれで進むしかない。お前を殺して後で考える」
「~っ! い、一週間だな? その間、貴様の義妹たちは我が手中に収めておく。妙な真似をしたら分かっているな?」
「あぁ……」
丸上は岩屋を殺すために一瞬だけ集めた魔力を一時的に霧散させた。それを感じて安堵した岩屋は少しだけ精神的余裕を取り戻したように告げる。
「ふん、気が変わったらお前の愛する義妹たちを通して連絡するんだな」
「……ちっ」
岩屋の言葉に対し、丸上の返事は舌打ち一つ。そして虚ろな目で全てを諦めた顔をしてその場から立ち去った丸上の後姿を化物を見るような目で岩屋は見送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます