第2話 気づいたら…

キーンコーンカーンコーン


「起立、気をつけ、礼!!」


「「「「おねがいします。」」」」


とある中学2年生の教室に少しだらけた声が響く。

ここには新品独特どくとくの匂いはしない。どの筆箱も少し使いふるしている感がある。


初めての算数の授業から、気づけば俺は7年も経ってしまった。

小学生時代からは特に大きなニュースもなく、普通に成長した。

特に、って言ったら...あ、小学2年生の冬からコ◯ナが流行したことくらいだ。


蒸し暑いな〜、と思いながら着席する。

ふと、セミが鳴いてるのに気づき、窓の外を見る。

風で木の葉がゆれている。


「おい、中崎なかざき、前見ろよ〜。」


数学の授業担当の小林こばやし先生に注意される。

ちょっと窓の外を見ただけじゃん。


俺は反抗もせず、大人しく前を向く。


「まず、前回の授業の復習をするぞ〜。じゃあ、三角形の合同ごうどう条件じょうけん3つ。まず1つ目。え〜と、今日は9月3日だから、足して、出席番号12番、木田きだ。」


「はい、えっと...3組の辺の長さがそれぞれ一緒のときです。」


「よし、オッケー。じゃあ次は掛けて...27番。豊橋とよはし。」


俺はなぜか少しドキッとした。


「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいときです。」


「正解。じゃあ次は...」


ふと、豊橋の横顔を見ていた。髪が揺れた瞬間、また少し、ドキッとしてしまった。

なんなんだろうか、この気持ちは。


周りでセミが鳴き始める。

そこで俺は我に返った。


「今日は、三角形の相似そうじ条件をやるぞ〜」


小林先生は淡々と授業を進める。




「「「ありがとうございました!!」」」」


ハッ!!


俺はその声で目を覚ました。

今日最後の授業である数学が終わった。


授業中に寝てしまった罪悪感ざいあくかんにかられながら教室の掃除をする。


俺たちの学校は1日のすべての授業を終えてから、掃除をして解散となる。


「お、どしたん、今日は真面目に掃除してるじゃん。」

小学生時代からの友達の木田にからまれる。


「失礼な、毎日真面目に掃除してるわ。」


「まぁ、今日授業中寝てたもんな、それの罪悪感か。後ろから丸わかりだったぞ。」


「うっ...」


「まあいいよ、ノート貸してやるから帰りガリガリ君な。奢り。」

ちょっとがめついところもあるが、実はかなりいいヤツ。


掃除が終わって、終礼に入る。いわゆる、”終わりの会”ってやつだ。


「さて、明日から体育祭準備期間に入るぞ。」


「よっしゃ〜!」

「待ってました!」


クラスの中がざわつき始める。


「はいは〜い、静かに。

じゃあ、明日から、怪我とかはしないように。そして元気に登校してくれ。

よし、解散!!」


即帰宅組がまっさきに動き出す。


「楽しみ〜」

「まぁ、うちのクラスは絶対優勝だから。」


もう、体育祭気分になっている人もいるようだ。


そして俺は、木田にノートをうつさせてもらい、86円の損失をうけて、家に帰ったのだった。


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