地元一の超絶美少女と再会したら逆高校デビューしてた件〜なんか気づいたら激重感情を向けられているような〜
蝶野
第1話 地元一の超絶美少女と再会したら.....
高校の入学式当日。
新しい学校生活が幕を開ける日の朝。
俺──
3年間過ごした学び舎との別れや、別の高校に進学する友人との別れに悲しむ生徒達。
しかし、彼らが悲しんでいるのには他にも理由があった。
『はぁ。もう柊と顔を合わせる機会が無いかもしれないとか、マジ悲しいわ』
『ほんとそれな。柊、遠くに引っ越すの今からでもナシにしてくれねぇかな』
『受験はもう終わってるんだし、流石に今更それはないだろ。あーでも、柊の顔もっと見たかったわ』
悲しみに暮れる大勢の男子生徒の視線の先には、黙々と歩いて校舎を後にする一人の女子生徒の姿があった。
そのあまりにも美しく整い過ぎた顔立ちから、この学校一……いや、それどころか地元一可愛いと言われている超絶美少女だ。
加えてスタイルも抜群と目を惹く要素しかない柊はいつも注目の的だったし、男子からの人気は当然凄まじかった。
そんな柊が引っ越して遠く離れた高校に通うとなれば、大勢の男子達が悲しむのも当然だろう。
去らないで欲しい……そう願っている男子は大勢いる。
しかし、彼らのそんな願いが届く事は無く、当の柊はあっという間に去って行った。
その後、柊の姿が見えなくなって少し経ってから、俺も帰路についた。
柊と同じで、この後遠くに引っ越す予定の俺も。
◇◆◇◆◇
「……さてと」
目が覚めた後、手早く準備を済ませてから家を出て学校へと向かう。
ここに引っ越して来てから日が浅い事もあって、まだ周囲の環境や光景に慣れていないので、色々と新鮮な気持ちになりながら通学路を進みみ、やがてあっという間に学校に到着した。
「……確か、まずは最初に校内掲示板に貼られているクラス表で自分のクラスを確認するんだったよな」
もしも地元の高校に通っていたら、中学までの同級生や友達と同じクラスになれているだろうかと、今頃はそんな期待と不安を抱いていただろうな。
そんなことを思いながらクラス表を確認しに行く。
「えっと……」
一組から順番に確認する。
知ってる生徒は勿論いないので、探すのは自分の名前だけ。
しかし……
「……えっ」
とある名前を見つけた瞬間、動かしていた視線が驚きのあまり止まった。
『柊美月』と書かれた名前を見つけた瞬間に。
えっ、柊って……まさか、あの柊か?
……いや、流石にただの同姓同名の別人だよな。
少なくとも、地元から引っ越した俺と柊がまさか同じ高校に通っているという展開よりかは、そっちの方が現実味がある。
そう結論付けて、引き続き自分の名前を探そうとした時だった。
「あ、ごめんなさい」
誰かとぶつかってしまったらしく、ふと背中に軽い衝撃が伝わった。
「いえ、こちらこ……」
あれ、今の声どこかで聞いたことがあるような……
そんな違和感を覚えながら振り返ると、そこには黒髪の女子生徒が立っていた。
黒縁眼鏡をかけた、前髪で目が隠れている女子生徒。
見た瞬間、地味な印象を受けた……が、次の瞬間、そんな印象が吹き飛ぶくらいの衝撃を受けた。
なぜなら……
「えっ、柊……だよな?」
「えっ……み、宮河……君?」
自己紹介は済ませていないのに、お互いが誰なのか分かっている。
そしてこの瞬間、確定したのだった。
目の前にいる地味な女子生徒が、地元一の超絶美少女である柊美月である事が。
……マジかよ、どんな偶然どんな確率だよ。
俺と同様に柊も衝撃のあまり言葉が出ないらしく、口を開いて驚いている。
「み、宮河君、どうしてここに……?」
「ど、どうしてって今日からこの高校に通うからだけど。というか柊、どうしたんだその髪型だったり見た目は?中学までとはまるで別人だけど」
「……っ」
柊の肩がビクンと弾む。
「な、何を言ってるのかしら。私はずっとこういう容姿をしていたわ。勘違いよ」
「いや、勘違いじゃないって」
小・中の9年間同じ学校で過ごしていたのに、そんな勘違いを今更するわけがない。
それに……
「じゃあ中学の頃の柊の写真を一緒に確認してみるか?」
適当にクラス写真でも探せば、当時の柊が写っている写真は間違いなく出てくる。
ポケットからスマホを取り出そうとした刹那、柊が俺の手を掴んで静止させた。
「み、宮河君、ちょっと一緒に来てっ」
「えっ!?」
柊は俺の手を引きながら人混みを掻き分け、人気の無さそうな校舎裏の方へと向かって行く。
おいおい、一体何がどうなってるんだ!?
こうして、あまりにも予想外な再会と展開をキッカケに、俺の高校生活は幕を開けたのだった。
◇◆◇◆◇
【柊美月side】
……なんで……どうして。
宮川君の手を引いて校舎裏へと向かっている私は、内心とても動揺と混乱していた。
どうして、折角これまでと違う日常を送れると思っていたのに……っ。
『可愛い』
そう言われることは最初、とても嬉しくて誇らしかった。
でも、今はもう……
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