第12話 できるからやった。後悔はしていない
腹が満たされたところで、ラニは立ち上がり、軽く腰を伸ばした。
「よし、運動がてら当面の課題に着手するぞ」
誰にともなくそう言い放つと、ふわりと衣の裾を翻す。
当面の課題――それは、眷属の整備である。
現在、この広大な古城の運営と管理は、ほとんどが老執事・爺やに一任されている。もちろん、それは爺やの能力が常軌を逸して高いためであり、不満があるわけではない。だが、いくら彼が万能とはいえ、全てを一人に背負わせるのは長期的に見て好ましくない。
それに、料理人も欲しい。
何より、城には「メイド長」が必要だった。
城に仕えるメイドたちをまとめあげる存在。すなわち、家事全般に秀で、一定の戦闘力も備え、頭脳明晰であらねばならない。
静かに目を閉じ、イメージを描く。
人型。知性があり、器用で、体力があり、かつ美しい。この条件を満たすなら悪魔系統であることが望ましい――そう結論づけたラニは、爺やが羊型であることにちなみ、メイド長には山羊をベースにすることに決めた。
(そう言えば、爺やは執事で羊の夢魔だの…)
“私”がどんな連想の果てに爺やを創ったのかを何となく察してしまい、そっと蓋をする。
(集中するのじゃ。今は“メイド長”じゃ)
自分に言い聞かせ、候補を絞る。
選んだのは「黒山羊バフォメット」。
そのイメージをベースに生み出される女性は、長い黒髪を後ろで三つ編みにし、クラシックなメイド服を着こなす楚々とした人物。頭に乗せたホワイトブリムから突き出た山羊の角は控えめながらも、人ならざる存在であることをわずかに匂わせる。
そして、能力は家事全般に留まらず、城内の防衛を担える戦闘力も兼ね備えている。
――暗器の使い手。単独での対処能力も高い。
ラニは、確信を持って力を解放する。
「スキル“眷属創造”。メイド
ふいに、一陣の風が吹き抜けた。
空間に揺らぎが生まれ、そこに姿を現したのは一人の女性だった。
「ラニ様の求めに応じて、まかり越してございます」
鈴を転がすような声で挨拶すると、黒山羊の角を持つ清楚なメイドが丁寧に一礼する。
ラニの想像した通り――否、それ以上の完成度である。
案の定であるが、ラニの膝はまたも笑っている。
この魔王、全く反省していない。自らの美意識を全力で創造している。
目の前のメイド長セレーネはまさに、絵に描いたような清楚だった。
しかしその中に、膨らみかけの梅の蕾を手折ってみたくなるような、背徳的な誘いを感じるその容貌は、なるほど正真正銘悪魔の魅力である。
並みの男であればその瞳に見つめられただけで性癖の根幹が歪むほどの衝撃を受けかねない。その辺の淫魔より、よほど凶悪だ。
(……また罪なものを創ってしまったな)
ラニは口元を緩め、密かに満足げに頷いた。
この調子で、今後もガンガン攻めていく予定である――何を、とは言わない。
思考を切り替え、彼女はセレーネに向き直る。
「部下は何人欲しいかの?部下の能力に希望はあるかえ?」
問われたセレーネは白魚のような指先を顎に添え、しばし思案する素振りを見せた。
その仕草すら絵になる。
そして、その花弁のような唇から零れ落ちたのは、たった一語。
「パワー」
……!?!?!?
ラニの思考は硬直した。
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読んでくださってありがとうございます!
明日は「第13話パワー系メイドとは一体…」です。
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