○○くんへ

日彩幹

結婚

「結婚」


悔悛の風に揺られながら

一本の樹木はただ沈黙を貫いていた


砂塵舞う渺茫たる大地の中に

孤児となった黄土色の鳥が

諦念を抱いて佇んでいた



「お前の胸から流れ出る血は やがて無垢な少年を苦しみの底へと陥れるだろう」

何者かが 大地に嘲笑の声を投げた



その時 天が運命に逆らい

慈雨を捧げはじめた

樹木は歌いだし 砂漠は新たな生命を生み出すことを誓った

鳥は相変わらず孤独であったが 遥か彼方の海の方へと飛び立った



結婚とは そういうものではなかろうか

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