人狼将棋
鷹山トシキ
第1話 ⚔️芹沢︰ゲームスタート
2040年1月1日 日本から法律が消えた。
首相になったのは織田光秀っていうサイコパスだ。旧首相の足利謙一は織田の派遣した部隊に射殺された。
織田は人質(無能な議員や足利首相の妻子など)を、四国にある孤島にある洋館に監禁し、警察庁に犯罪自由化を下知した。官房長官の六角藤孝や、警察長官の三好惟政は要求を呑まざるおえなかった。
🏢 呼び出しと通告
ある日の午後、マヨネーズの充填ラインで作業をしていた芹沢は、工場長に呼び出された。工場長は、ベテラン社員の安達と名越が突然いなくなったことで、現場の管理業務が大幅に増え、常にイライラしていた。
工場長の隣には、芹沢と同じ派遣会社**『ファルコン』**から出向してきた、人事担当者が座っていた。
「芹沢君、突然だが、君の契約を今月末で終了する」
芹沢は、自分の耳を疑った。
「え…? なぜですか? 業務上のミスは一切ありません」
人事担当者は、冷酷な目で続けた。
「会社の**『組織再編』と『コスト最適化』のためだ。君のポジションは、十三君(十三敦)のように『重要な歴史的背景』**を持つ社員ではない。我々ファルコンの判断でもある」
これは、表面上の理由ではない。暗殺組織『ファルコン』にとって、現場の秩序が回復し、十三敦という重要な**「歴史的プレイヤー」の精神状態が安定した今、役目を終えた派遣社員は、文字通り「消耗品」**として処理されるのだ。
芹沢は、自分の人生が、**『ファルコン』という暗殺組織の「ゲーム」**の駒として使われ、そして捨てられたことを理解した。彼の心の中には、怒りよりも、深い虚無感が広がった。
「…そうですか。お世話になりました」
🚶 荷物と未来の空白
芹沢は、すぐに自分のロッカーから私物を詰めた。中には、家族の写真と、来年の計画が書き込まれた手帳が入っていた。
彼は、作業着から私服に着替え、マーメイド食品の裏口から外へ出た。
工場から一歩外に出ると、マヨネーズと酢の匂いが消え、冷たい風が吹きつけた。
「俺は、何のために働いていたんだ…」
彼の頭には、安達や名越のような奴からパワハラを受けていた十三敦の姿が浮かんだ。
彼は、角館の街並みをぼんやりと見つめながら、これからどこへ向かうべきか、まるで分からなかった。
💼 ハローワークと空虚な手続き
派遣切りを通告されてから数日後。芹沢は、仙北市角館から少し離れた市のハローワークに来ていた。
彼は、派遣会社『ファルコン』から送られてきた離職票を提出し、雇用保険の給付手続きを行った。手続きの窓口は混雑しており、機械的なやり取りが続いた。
「マーメイド食品さん、ですね。自己都合ではなく、会社都合の契約終了と。給付制限はありませんので、手続きはスムーズに進みます」
職員の事務的な声を聞きながら、芹沢は心の中で自嘲した。
手続きは完了したが、彼の心は満たされなかった。安定した職を失ったという現実的な不安と、自分が誰かの陰謀によって操られていたという疑念が、心を蝕んでいた。
🎲 ボードゲーム屋の静寂
ハローワークを出た芹沢は、無意識のうちに、昔から通っていた小さなボードゲーム専門店へと足を向けた。現実の複雑さから逃れ、ルールと論理で完結する世界に身を置きたかった。
店内には、新作のボードゲームが整然と並び、静かなジャズが流れている。
芹沢は、棚の隅に置かれた軍人将棋の箱を手に取った。幼い頃に遊んだ、シンプルながらも奥深いゲームだ。
「いらっしゃいませ。芹沢さん、お久しぶりですね」
声をかけてきたのは、店主の高木だった。彼は、長髪と丸眼鏡の温和な男性で、ボードゲームの知識にかけては右に出る者がいない。
「ええ、少し時間がありまして。今日は、頭を空っぽにしたくて、軍人将棋でもやろうかと」と芹沢は答えた。
♟️ 駒に宿る「真実」
高木は、芹沢を店内の対戦テーブルに案内し、軍人将棋の盤面を広げた。
対局中、芹沢は、敵の**「スパイ」に自軍の「大将」**を抜かれる可能性を恐れ、不用意な駒の動きを避けた。
「芹沢さん、慎重ですね。駒の正体がわからない不確実性を恐れている」
高木は、駒を並べながら言った。
「そうですね。正体不明の敵がいると、論理が崩れますから」
その言葉を聞いた高木は、ふと手を止めた。
「論理が崩れる、ですか。それは、まるで今、一部で密かに流行している**『人狼将棋』**みたいですね」
芹沢は、ハッとして顔を上げた。
「人狼将棋? それは…」
🐺 人狼将棋のルール解説
高木は、軍人将棋の駒を片付けながら、人狼将棋について説明し始めた。
「通常の将棋に、あの有名な『人狼ゲーム』の役職を取り入れたものですよ。例えば、『人狼』の役職を持つプレイヤーは、特定の条件で盤上の駒をランダムにテレポートさせることができる」
「テレポート…それは、将棋のルールを根底から覆しますね」
高木は、目を細めて続けた。
「ええ。将棋は本来、完全情報ゲームです。しかし、人狼将棋では、相手がいつ、どんな**『能力』を使って盤面を破壊するかわからない。プレイヤーは、相手の指し手だけでなく、相手の『役職』と『心理』**を推理しなければなりません」
「しかし、どこで手に入るんですか、そのゲームは?」
「さあ。ネット上ではほとんど情報が出ていません。ただ、一部のディープな愛好家の間では、**『現実とリンクしている』とか、『敗北すると、現実の生活に悪影響が出る』**とか、物騒な噂も流れていますよ」
高木は、芹沢の顔をじっと見つめ、何かを探るように微笑んだ。
「芹沢さん、あなたなら、この『人狼将棋』の、**『見えないルール』**を解き明かせるかもしれませんね。論理と不確実性…この二つに、あなたは今、強い関心を持っている」
(人狼将棋…正体を隠した誰かの『能力』によって、自分の人生がテレポートさせられたとしたら?)
芹沢は、ハローワークで失った自分の**『駒』と、その『居場所』**を取り戻すため、この謎めいたゲームに引き込まれていく予感を覚えた。彼は、高木に、人狼将棋をプレイできる場所について、さらに尋ね始めた。
自宅に戻り、母親の作った野菜カレーを食べ終えると、自室でスマホのチャッピーに『人狼将棋』について尋ねた。
これは、**「人狼(ジンロウ)」**ゲームの要素を組み込んだ、架空の将棋のバリエーションですね。
将棋のルールを基本としながら、正体を隠した役職(人狼、市民、予言者など)の能力がゲーム中に発動することで、盤面の状況がランダムに、あるいは心理戦によって大きく変動するゲームとして描写します。
🐺 人狼将棋(JINROU SHOGI)の概要
人狼将棋は、通常の将棋のルール(駒の動き、成、持ち駒の使用)をベースとしながら、対局者の一方、または双方が**「人狼役職」**を秘密裏に持ち、その能力を特定のタイミングで発動させることが可能な、心理戦と運の要素が加味された将棋です。
♟️ 基本ルール
使用駒: 通常の将棋駒を使用します。
初期配置: 通常の将棋と同じ初期配置です。
勝利条件: 相手の玉将(王将)を詰ませることです。
役職(役割): ゲーム開始時に、対局者または第三者が各プレイヤーに秘密裏に以下のいずれかの役職を与えます(例:一方が人狼、もう一方が市民)。
🎭 役職(ロール)と特殊能力
このゲームの肝となるのが、**「役職カード」に書かれた特殊能力です。能力は、対局開始前、または特定の駒が動いた後に「潜伏能力(スリーパー・アビリティ)」**として発動できます。
1. 🐺 人狼(ジンロウ)
人狼役職を持つプレイヤーは、自身の正体を隠して対局を進めます。
能力名 発動条件 効果
夜の襲撃(ナイト・キル) 相手の歩を成る(と金にする)瞬間 相手の盤上の好きな駒を一つ、ランダムな場所にテレポートさせる(位置を動かす)。玉将は不可。
偽りの証言(フェイク・リード) 自分の角行または飛車を取られた瞬間 相手の取った駒一つを即座に打ち直しさせる(相手の持ち駒にはならない)。ただし、その駒は成れない。
2. 🛡️ 市民(シチズン)
市民役職を持つプレイヤーは、特殊能力に頼らず、純粋な棋力で対局を進める役割です。
| 能力名 | 発動条件 | 効果 | |
| :--- | :--- | :--- |
| 信念の一手(ディフェンス・ムーブ) | 自分の玉将(王将)が王手をかけられた瞬間 | 王手を回避する次の手番を、1分間の思考時間無制限で指すことができる。 |
3. 🔮 予言者(プロフェット)
予言者役職を持つプレイヤーは、相手の役職を推理する能力を持ちます。
| 能力名 | 発動条件 | 効果 | |
| :--- | :--- | :--- |
| 真実の透視(トゥルース・サイト) | 自分の金将が、相手の駒を一つ取る瞬間 | 相手の持ち駒の中から、ランダムに一つ、次の一手で「どこに打つか」の予測情報を相手の目隠しで確認できる(情報が当たるとは限らない)。 |
| 役職の暴露(ロール・エクスポーズ) | 自分の銀将が相手の玉将(王将)から三マス以内に入った瞬間 | 相手に「あなたは人狼ですか?」と質問することができる。相手は嘘をついても良いが、必ず声に出して答えなければならない。 |
🚨 ゲーム進行の特殊な流れ
役職の決定と非公開: 第三者が各プレイヤーに役職を秘密裏に伝える。
対局開始: 通常通り対局を始める。
能力発動の宣言: 各プレイヤーは、上記の発動条件を満たした際に、能力を使用するかどうかを口頭で宣言できる(例:「夜の襲撃を使います!」)。
能力の効果適用: 宣言があれば、特殊な効果(テレポート、打ち直しなど)を盤面に適用し、対局を続行する。
勝利: 最終的に、相手の玉将を詰ませたプレイヤーが勝利します。役職が何であっても、玉を詰ませることが目的です。
心理戦の要素
「人狼将棋」の面白さは、以下の心理戦にあります。
ブラフ(ハッタリ): 役職が市民でも、大げさなジェスチャーや声かけで、相手に「人狼」だと思わせることで、相手の判断ミスを誘うことができます。
能力の温存: 人狼側は、能力を使いすぎると正体がバレやすくなるため、どのタイミングで強力な「夜の襲撃」を使うか、ギリギリまで温存する戦略が重要になります。
駒の誘導: 予言者は、相手の駒を金将で取るように、意識的に誘導する指し方が求められます。
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