調査


「色々調べてみるけど大した情報は出てこないな」


リョウタがマウスを動かしながらそうぼやく


「歴史は長そうだけど、生徒減少による閉校は珍しい話じゃないし、何か特別な事が合った感じはしなさそうね」

アオイも青葉台中学のサイトを見つめながらそう言った 

「特別なこと?」


「付近で起きた殺人事件や大きな事故、もしかしたらそこに記憶を失った手がかりとかがあったりするかなって思ったんだけど」


「益々謎だな、やっぱお前なんであんなとこいたんだよ」


リョウタが椅子に凭れ掛かり腕を後ろに組みながらナナミに尋ねと


「それが分かってるなら私はここにいない」

とナナミが返し続けて

「唯一つ確かなのは自分でも驚くほどピアノに執着してる事くらい。記憶がなくても違和感なく弾けるしそれ以上の何かを感じるから」


「何かって?」

「分からない」

ナナミはそう言い、また窓の景色を見つめる。

何だろうこの感覚。疑念と互い違いのピースが一つの帰結に繋がっていく感覚

その折


「おーいちゃんと励んでるか?」

橘先生が教室に入ってき、不意にナナミと目が合った。その折一瞬驚いた様な顔をした

「その子は?」

「最近偶然知り合って、この子記憶を無くしてるみたいで一緒に探してあげてるんです」

アオイが橘先生に説明するとナナミも軽く会釈をした。

「記憶を....ね..、君名前は?」

「ナナミって言います」

「つかぬ事を聞くけど俺の事知らないよね?」

「多分知らないと思います」

「どうしたんだよ先生」

「いやスマン何でもないんだ、あと良ければ一枚写真を撮らせてくれないか?広報用にほらこっち向いて」

橘先生はそう言うと一枚写真を撮ると、

「あと前話してたホタル狩りの話、今週の土曜日でも問題ないか?」

と思い出した様に尋ねる

「俺は問題は別に良いよ」

「私も大丈夫です。」

「OKナナミちゃんも来るかい?」

「来ても良いんですか」

「勿論、場所は去年と同じだから二人に聞いといて」

「分かりました」

「じゃ当日は18時学校集合でよろしく」

と言い残し何処かに行ってしまった。

「何か変だったな今日の先生」

リョウタがそう言いまた作業に戻った。



ーーーその頃

屋上の扉を開け、ポケットから煙草を取り出しライターで火を付けると一息吸い電話を掛けた


「もしもし麻里さん?」

「正平君久しぶりね、アオイは元気してる」

「ああ」

「いつも家を空ける分貴方には感謝してるわ」

「自分は全然ですよ」

「にしても珍しいわね正平君から電話かけてくるなんて。何かあった?」

「麻里さんに見て欲しいものがあって何も言わずにこの写真を見てくれないか」

メールを麻里に送ると暫く沈黙が走り

「これってどういう事?」

疑念と少し焦りが混じった声色で麻里が尋ねた

「俺にも分からない」

「この子の名前は?」

「ナナミちゃんだってさ」

電話越しから大きく息を吐く音が聞こえてくる

「もしかして私たちの過去アオイにはもう話した?」

「いいや、まだ話していない。だが貴方の子だいずれ答えに辿り着く筈だ」

「分かったまた何かあったら連絡貰える?」

「了解。ではまた」

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