香という本来は雅な文化を、末法思想と怪異の側へ反転させているのが印象的な作品でした。「人伽羅」という銘そのものが禍々しく、目に見えない香りが人の理性や境界を侵していく怖さがよく出ています。また、検非違使が怪異を事件として追っていく構成なので、怪談でありながら地に足がついているのも良いです。惨さだけで終わらず、どこか鎮魂の余韻を残すところも含めて、平安怪異譚としてかなり手堅い一作でした。