素敵な魔女になる条件。

猫の尻尾

第1話:ペットショップの猫。

観音かのんさんの職業は理髪師。

まだ25歳と若いけれど郊外の一角で「理髪店・カオス」って店の店長、

マスターをしている。


観音さんのフルネームは「千手 観音せんじゅ かのん」って言う。


もちろん独身の男子。

中肉中背、身長は168センチ前後。

男前レベルでいうと平均以上か、現在付き合ってる女性はいない。

所有車はミニ(昔で言うところのミニクーパー)とベスパって

イタリアのビンテージスクーター。


客はほとんど、気の知れた常連。

観音さんはアシスタントも持たず一人でお客さんに対応していた。


観音さんは前から思っていた。

理髪店・カオスの三軒隣の雑貨屋のおばあさんちに看板猫がいる。

いつもブスーっとして店の前の椅子の小さな座布団に鎮座している。

その子が可愛くて・・・。


根っからの猫好きな観音さんは、自分の店にも看板猫が欲しいと思って、

ネットでブリーダーのサイトなんかをよく覗いていた。

でもやっぱり、ここはペットショップに行って直に猫ちゃんを見て

飼いたいと思った。


お店が休みの時、意を決して猫ちゃんを見に街のペットショップに出かけた。


店内に入るとの手前に猫ちゃんやワンチャンのグッズやおもちゃが陳列して

あってその奥にペットゲージがずらっと並んでいた。


その店は猫ちゃんよりワンちゃんメインのようだった。

観音さんはワンちゃんも嫌いじゃなかったけど今日の目的は猫ちゃん。

なので猫ちゃんコーナーで子猫を物色した。


だけどあいにく子猫ちゃんはみんな売り切れたのか、そこそこ成長した

ブルーグレーの毛色の猫ちゃんだけが一匹残っていた。


残っていたんじゃなくて逆に観音さんはタイミングがよかったんだ。

その猫ちゃんは本当ならとっくに売れていてもおかしくないくらいの

いい猫ちゃんだったからね。


でもなぜか売れ残っていた。


「可愛いね、君」


で、観音さんは一目でその猫が気に入ってしまった。


その猫ちゃんは毛がほわほわで瞳がブルー。

猫ちゃんのプロフィールに「シャルトリュー」と書いてあって、フランスの

猫ちゃんらしい。

で、お値段は20万5000円。


(およよ・・・20万もするのか?)


でも子猫だったらたぶん30万はしただろうな。

観音さんはその白い猫ちゃんに見とれていると、ふと声が聞こえた気がした。


「連れて帰って」


そう聞こえた。

すると猫ちゃんは観音さんの方を見て前足でおいで、おいでするような

ジェスチャーをした。


で、もう一度「連れて帰って」って聞こえた。


まさか猫がしゃべるわけないし、そう思った観音さんだったが白い猫ちゃんが

気に入ってしまってるから空耳みたいな声を間に受けた。


「理髪店にグレーっぽいイメージはカオスのアンティークな店にあっていい

しな・・・」

「よし決めた、この子にしよう、残り物に福があるって言うし・・・」


だから残り物じゃないんだって。


結局、観音さんは、その白い猫ちゃんを買って帰ることにした。

これからカオスの看板猫になってもらうために・・・。


で観音さんはウハウハで店に帰ると猫ちゃんと一緒に買ったキャットタワー

とかトイレなんかを店の中にセットした。

その後で猫ちゃんをケージから出してやって看板猫用に用意しておいた

アンティークな椅子の座布団の上に猫ちゃんを座らせた。


「明日から君はこの店の看板猫なんだからね・・・がんばってよ」


ケージから出た猫ちゃんは、さっそく、おおあくびして背伸びした。

で、自分の手や足を舐め始めた。

落ち着いたところで、その猫ちゃんはブルって一回身震いした。


身震すると・・・そのままプリプル震いはじめた。

だんだん動きが早く激しくなって目にも止まらぬ猛スピードでプルプル・・・。

そのスピードの速いこと、速いこと。


観音さんは、え〜って思いながら???で見ていると猫ちゃんのブルブルが

止まって、どんどん大きくなりながら少しずつ形を変えていった。


「なに?・・・なんだかな〜これ?・・・」


で、大きくなってくうちのそれがなんだか観音さんにも分かった。

大きくなるのが完全に止まると、なんとそこに人間の女の子が椅子に座って

いた。


それは茶髪の可愛い人間の女の子・・・。


「え?・・・なに?・・・どうなってる?・・・買ってきてそうそう

なに?・・・君は誰?・・・猫ちゃんは?どこ行った?」


つづく。



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