神父様だって一人の人間なんです。予定や都合はあるし、感情も持っています。
ただどんな状況にあっても、信者が罪を告白しに懺悔室にやってきたらそれを無下にはできません。
だって、神様父は信者の悩みに寄り添う存在なのですから。
この物語では、一刻も早く行くべき場所がある神父が、滑り込むように入ってきた信者の懺悔を聞く様子が描かれます。
神父は少しでも早く懺悔を終わらせたい。
でも懺悔人は長々と話す。執拗に確認してくる。
なんと運の悪いことか……。
読者はきっとそう思うことでしょう。
しかし、その思考は裏切られます。
すべてのことに理由はあったのです。
実はアレもコレも伏線だったという、緻密に設計された素晴らしい作品です!
どれが伏線で、どういう意味があるのか、ぜひ予想しながら読んでみてください!!
きちんと伏線が貼ってあったのに、実にテクニカルに、何気ない形で描写されているため、見事に見落としました。
それくらい、お話の広げ方が巧みで、引き込まれる力があります。
早く仕事を終えたい神父の苛立ちや、冗長で迂遠な話ばかりする女の鬱陶しさ……そういったものが真に迫っているからこそ、まんまと「見落とさせられた」、とでも言いましょうか。
そういう意味では、話のオチを知った上でもう一度読みたくなりますし、読み返してみると無駄な要素が少ない、実に洗練された構成になっているということにも気付かされます。
懺悔室という場所、締めの時間のギリギリというタイミング、そして女のどうでもいい話……全てがバッチリ無駄なく噛み合っています。
それだけに、真相が明らかになった瞬間のすべてのピースがハマった瞬間の快感が凄まじいです。
間違いなく、あなたは二度読まされることでしょう。
是非とも一つ一つのキーワードに注意をしながらお読みください。
教会の懺悔室。そこが物語の舞台にございます。
あまり馴染みのない、映画でたまに見かける場所にございますな。
罪を犯した人と、神父。その間には「しきり」がされており、お互いの顔や様子は見ることができません。
この日、神父は何やら急いでいるようでした。
日の沈み、懺悔室にもう、誰も来ないことを確認すると、『警察』に向かおうとしております。
なんでも緊急を要するのですが、そこに、懺悔をしに来られた女性がやってまいりましたので、話を聞くことに。
しかし、なぜか妙です。
女性の話は、冗長で周りくどく、なかなか本題に入ってくれません。
急いでいる神父は、次第に苛立ちを隠せなくなります……。
果たして、
この女性の犯した罪とは……?
短編として、非常に優れたストーリーだと思いました。
最後まで引き込まれましたし、
「うわ、やられた」
なラストが待っております。
ご一読を。
相も変わらず作品のクオリティーが群を抜いています。今回もよく練られたミステリ作品でした。
舞台はイタリア。教会の神父として働く「僕」は懺悔室で一人の女性の罪の告白を受けることとなります。
「僕」は彼女の相手をしながらも、何かに怯えているような様子。読者はこの明らかな「信頼できない語り手」に対してモヤモヤとした感覚を抱いたまま読み進めることとなります。
女性の懺悔のほうは懺悔のほうで妙な長話となりますが、こちらも何やら隠し事をしたまま話しているような感じが漂っています。
彼女の懺悔話にはイタリアの異国情緒を感じさせるようなリアリティーがあって、それだけでも十分に楽しむことができました。
でも本作の醍醐味はそんなところではありません。ミステリ的真相がラストで明かされたとき、読者は間違いなく舌を巻くこととなるでしょう。
この真相の提示も、ジワジワと少しずつ見えてくるような構成になっており、段々と体を蝕まれていくホラーのような感触がたまりませんでした。
読者の期待にしっかりと応えつつ、さらにその期待を超えていく。非常に完成度の高い作品でした。