TS魔法少女になっても「某は忍び」と言い張る凄腕忍者、護衛対象の美少女にガチ恋されそうろう 〜お風呂も接吻も同衾も、全身愛でられるのは任務ゆえ無問題なり〜 ※第0話追加しました(旧題 シノビ~)

プロローグ ※甘々な第0話追加しました

第0話 凄腕忍びの成れの果て ~これは、いずれ訪れる甘々な未来~ 

「リンちゃん」


 甘い声が耳の穴から入り込んできて、くらっと脳が揺れる。

 ふともものあたりがそわそわしてきて、きゅうっと胸が狭まっていく。誰もいない夕暮れの帰り道。放課後の雫は、距離が近い。


「さっき買ったこのお菓子、毒見しなきゃ危ないよね、お願いしていい?」


 腕を絡められる。女となったこの身体の細腕が、弾力性のある胸に押しつぶされる。指を絡められて、じんじんじわじわと火照りが全身に広がっていく。


 胸の中がうずいている。喉から少女の、か弱い声が飛び出していく。


「し、雫、いささか近いです、毒見は承知しましたので、離れてもらっても、よろしいでしょ……ひゃ」


 首筋をつーっと指で撫でられて、ぞくぞくとした痺れが背中を駆け上った。


「うふふ……リンちゃんかわいい、もっと硬派だぞーって感じだったのに、変わったね」


「そんなつもりはありませぬが……そ、そうだとしたら、雫のせいです、間違いなく」


 閉じた唇が震えている。内股になって、くねくねと身体がおかしな動きをする。息が熱い。肌が熱い。胸が熱い。


 男でいたときはこんな気持ちに、こんな感覚に、なったことなんてなかったのに。


 某は、壊れてしまった。


「はい、あーん」


 密着したまま、雫は棒状のチョコ菓子を食べさせようとしてくる。


 口を開くと、ぷるんっと唇が揺れた。


「あ……あーん」


「んふふ」


 雫のチョコ棒が、口内へと侵入してくる。やや乱暴な手つきで、舌の表面が先端に押される。口を閉じると、パキッと音がして、甘い甘い、とろけそうな味が広がった。


 飲み込むと、喉がきゅると鳴った。


「ぷはっ……平気のようです、おまたせ、しました、ぜひご賞味ください、んっ」


 雫は、腰にまで手を伸ばしてくる。制服の裾をずらされて、素肌に触れられる。

 びくっと脇腹が跳ねた。


「両手塞がっちゃってるから、口移し、して」


「ぁ……それは、粘膜の交換は感染症のリスクがあるため、不用意に行なうべきではないかと……ないかと……」


 見上げてくる雫の唇が、拡大されているかのように見えた。


「し、て」


 沸騰しそうなほどに顔が熱くなって、それでもリンは「ご、ご所望とあらば……」と頷いた。


 雫が手にしていたパッケージから、チョコ菓子を一本、取り出す。持ち手の側を、咥える。


 ちょこんと顎を突き出すと、反対側を雫が咥えた。


 かりかり、かりかりとかじられて、あっという間に指くらいの隙間になる。雫の匂いが近い、鼻から入って、くらくら脳を揺さぶる。雫の顔が近い、視界が雫でいっぱいになる。


「ん……」


 唇が近づく、あと五ミリ。いつのまにか雫は正面にいて、胸と胸がくっついている。体温がひとつになって、唇が――


 リンの耳が、右後方6メートルほどの地点に、不審な足音を捉えた。


「くせ者っ!」


 ぼんやりしていた意識が、視界が開けたように明るくなる。雫をさらに抱き寄せて、そのまま倒れ込んだ。


 制服を忍び装束へと変化させ、敵へとクナイを放った。


「ぎゃっ」


 男の短い悲鳴が聞こえて、すぐにバタッと倒れる音が響いた。


 腕の中でぽかんとしている雫に、リンは言った。


「避難しましょう、ここは危険です」


 雫の顔が、へなへなと崩れていった。


「もぅ、また敵なのぉ、いいじゃん、キスしよ」


「駄目です。まずは安全の確保からです。跳びます、掴まっていてください」


 雫を抱え、リンは上空へと跳び上がった。



 追手がいないことを確認してから、リンは深い息を吐いた。

 今のは危なかった。完全に、意識を狂わされてしまうところだった。


 おかしい、今の自分はおかしい。いつから変わった、数ヶ月前、出会った頃は、このような痴態は晒していなかったはず。

 なぜだ、なぜこんな、雫に愛されてしまっているのだ。

 なぜ、雫といると、情緒がおかしくなってしまうのだ。以前は、冷徹な、ただの刃だったというのに。完璧な忍びだったというのに。


 そう、こんな甘ったるい未来が待っているとは知らず、雫と出会った日、あのときの自分は、ただ愚直に任務を開始したのだ――

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