第4話

「大人しくなった」


「……ずるいです、先輩」





これが好きだって、先輩はわかってる。




だからずるい。


そう、本当に先輩はずるい。




……だって私、先輩の彼女じゃない。




彼女でもないのに、こんな風にするの、ずるいよ。


私だけにこんな先輩を見せてくることが、ずるいよ。





「耳まで真っ赤」


「な……っ!」





冷たい先輩の手が私の耳に触れる。ビクッと反応する私の反応をきっと先輩は楽しんでる。





「相変わらず耳、弱いね?」





先輩の顔が私の耳に近づく。それだけでまた私は反応してしまう。





「可愛いよ、遥陽」





耳元で連続して甘く囁かれ、もうどこか、どこか遠くへ私の理性が飛んでいったみたいで。そのまま近づいた先輩の柔らかい唇が私の耳たぶを含んで、ちゅっと恥ずかしくなるようなリップ音を鼓膜に直接落とす。




それだけで腰がガクッとして力が抜ける。支えてもらっていなかったら簡単に体は重力に負けていただろう。頭がふわふわするようで、よくわからなくなってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る