最高の親友。Ⅱ

◆魔法学校、入学(尚、予定は一切していない)


ある日、村に旅の魔法使いがやってきた。


「魔力測定を行います~。潜在能力に応じて、魔法学園への推薦も~」


村の子供たちは大はしゃぎ。

なんなら俺も少しワクワクしていた。


「ユウ、測ってもらえよ! やっぱ魔法使いだしな!」


「いや、たいしたことないって」


「燃やしたじゃねぇか枯れ草! あれ普通にすげぇから!」


そんなわけで、俺も測定を受けることになった。


魔法使いの男は、奇妙な水晶球を取り出し、

俺の手を優しく置かせた。


「では集中を――」


水晶が、光った。


ボフッ!!


光りすぎて、水晶が吹っ飛んだ。


「ぎゃああああ!! た、た、高すぎる……!!」

「な、なんだ今の……!?」

「水晶が割れたぞ!?」

「やっぱ魔王!? 魔王じゃねぇよな!?」


村中がパニック。

俺も混乱。


※水晶球:一般人の魔力向けです

(壊れる仕様ではない)


男は震えながら叫んだ。


「こ、これは推薦どころじゃありません!

 王都の魔法士団……いえ、王家が放っておきませんぞ!!」


嫌だーッ!!

チートバレ早いーッ!!


その夜。カイルは笑っていた。


「すげーじゃねぇかユウ! 俺んとこに来て正解だったな!?」


「いや、どう考えても不正解じゃない……?」


「なに言ってんだよ! お前はお前だろ!」


カイルは物怖じしない。

本当に、誰よりも。


その言葉は俺を救ってくれた。


◆はじめての討伐依頼


事件の翌日、魔物が村に現れた。


狼のような姿。牙が鋭く、目が赤い。


「カイル、俺も行く」


「おお! ついに出番か!」


俺は魔法で援護を、カイルは前線で斬り込む。


息はぴったりだった。

まるでずっと前から相棒だったみたいに。


「ユウ、後ろ!」


振り向けば、もう一匹。距離が近い。


焦って放った魔法は――


ドゴォ!


魔物ごとカイルを巻き込んで吹っ飛ばした。


「痛ってぇぇぇぇ!!」


「ご、ごめん!?」


「気にすんな! 死んでねぇ!」


笑ってるけど、めちゃくちゃ痛そうな顔してる!


討伐が終わり、村に帰ると村人たちが拍手で迎えてくれた。


「助かったよ、カイル、ユウ!」


「ありがとう!」


少し誇らしくて、自然と笑顔になった。


そしてその夜。


カイルは星を見上げながら言った。


「なぁ、いつかこの村を出て、

 世界を見に行かねぇか? ユウ」


「世界を?」


「ああ! もっと強くなって……魔王を倒す!」


……魔王。

この世界にはそんな存在がいるらしい。


「いつか、必ずだ」


カイルは拳を突き出してきた。


俺は拳を合わせた。


「約束だ」


二人の拳が触れ合った瞬間、

本当に何でもできる気がしていた。


あの頃は――


◆血の色だけが鮮やかに


その日の帰り道、村の空に黒い影が落ちた。


「なんだ……?」


カイルの表情が険しくなる。


次の瞬間――炎の渦が村を襲った。


「カイル!!」


煙と叫び声。

赤い光。

瓦礫の匂い。


魔物じゃない。

明らかに――高度な魔法だ。


カイルは家に向かって走り出す。


「母さん!! ミラ! ロイド!!」


家は半壊し、炎に包まれていた。


「いやだ……やめろ……」


カイルが近づこうとした俺を制す。


「ユウ! 後ろだ!!」


黒い鎧の男が立っていた。

獣のような赤い目。異様な存在感。


「……魔王軍、第五将」


誰かの声がした気がした。


カイルは震えながらも、俺を庇うように前へ出る。


「家族だけは……やめろ!!」


「無意味だ」


男が腕を振り上げた。

黒い刃が生まれ――


――俺は叫んだ。


「カイル!!!」


血が――鮮やかに散った。

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