異世界転生した俺は、親友のために復讐を誓う

@AbunaiSamurai

最高の親友。Ⅰ

第一章

【出会いと別れ。】


死ぬ時って、もっとこう、走馬灯的な何かがあるのかと思っていた。


だけど実際は――


「うわああああああああああああ!」


ドガァッ! バッシャーン!


……以上。

マンションのベランダで干していた布団が、風に煽られて落ちそうになって、

それを慌てて掴もうとした俺は、見事にスベって二階から落下。


19年の人生、あっけなさすぎるだろ。


でも、もっと意外だったのはその後だ。


気づいたら、青い空に羊雲、そして俺の横には謎のシスター。


「おめでとうございます!あなたは異世界に転生しました!」


テンション高ぇな!?

普通、せめてお悔やみの言葉が先じゃないのか。


「な、なんで俺が……?」


「それは……企業秘密です!」


企業秘密って何!?異世界転生って株式会社の事業なのか!?


ツッコミどころしかないけど、質問しても全てかわされ、

俺は半ば強制的に新しい世界へ押し出された。


◆異世界で目を覚ますと


目を開けると、


「おい、生きてるか?」


青年が俺の顔を覗き込んでいた。

栗色の髪、陽に焼けた肌。瞳はキラリと光り、どこか無鉄砲そうで――


転生前の俺と同じくらい?18歳か19歳くらいだろうか。


「……ここは?」


「ラグナ村だ。お前、森で倒れてた。魔物にでも襲われたのか?」


この世界の言葉が普通にわかるのも謎だけど、助けてくれたらしい。


青年はニッと笑って手を差し伸べてきた。


「俺はカイル=グラッド。困った時は、お互い様だ」


その笑顔は、妙に安心できた。


「……俺は、ユウ」


とりあえず、そう名乗った。

本名は佐野祐介という名前だけど、多分言ったらややこしくなるんだろう、異世界転生の定番だ。


「ユウか! いい名前だな!」


カイルは俺の腕を引っ張り、迷いなく立たせてくれた。


本当に、物怖じしない男だ。


◆カイルとの日々


カイルは狩人だ。

父親を早くに亡くし、母親と弟妹を養っているらしい。


「お前、家はどうした?」


「……わからない。目が覚めたら森にいて」


嘘ではない。むしろ本当のことを言っても信じてもらえなさそうだ。


「そっか。じゃあ当分はうちに居ろ! その間に色々思い出すだろ」


「え、悪いし……」


「気にすんな! 食費分働けばオッケーだ!」


この勢い、断れる気がしない。


そしてカイルの家で暮らすうち、

俺はこの世界のことを少しずつ知っていった。


この世界の通貨は「リル」、

馬車が主な交通手段、

そして――魔法が存在する。


「魔法って、どうやったら使えるんだ?」


「魔力を感じて、それを形にすんだよ。まぁ普通は訓練が必要だけどな」


普通は、だ。


「やってみろよ! レオンも魔法使えるかもしれねぇぞ!」


ノリと勢いでカイルは俺を森へ連れていき、

枯れ枝を拾って渡した。


「杖っぽいだろ?」


雑だな!


試しに――と意識を集中すると、

身体の内側でモワっと何かが動いた。


(出る……?)


目の前の枯れ草に向けて、なんとなく手を振る。


ボッ!


草が燃えた。


「うおお!? すげぇ!! 一発かよ!?」


「まじか……」


俺自身が一番驚いている。

現代では火打ち石すら扱えなかった男が、魔法だなんて。


「よし決めた! レオン、お前は魔法使いだ!」


「いや、決めるの早いだろ!」


だけど――悪くない。


新しい自分を見つけた気がして、少し胸が高鳴った。


◆笑っていた、あの頃


カイルの弟妹たちにも懐かれ、

村の仕事も手伝い、

夜には小さな宴会みたいに笑い合った。


カイルはいつも言っていた。


「俺はな、強くなりてぇ。

 村のみんなを守れるくらいに、さ」


「目標があるのはいいことだよ」


「お前は? 何をしたい?」


その問いに、俺は答えられなかった。


この世界に来た理由も、

何をすればいいのかも、まだわからなかったから。


だけど、ひとつだけ確かだった。


――カイルがいてくれる。それだけで十分だった。


「来いよユウ。俺と一緒に強くなろうぜ!」


彼の言葉に、俺は笑って頷いた。


「……ああ。よろしく頼む、カイル」

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