第6話 どんぐりぐりこ
週末は三連休で、さらさんの家で過ごすことになった。
ぐりこは、朝のうちは縁側で日光浴をする。
少し寒くなってきたけれど、朝の日差しは暖かい。
寝そべるぐりこを見て、少し大きくなっているような気がした。
おじいさんが言ったように、ぐりこは秋らしい食べ物を食べた。
芋、かぼちゃ、栗。
しかも、結構な量を食べる。
大きくなるのも当然だ。
わたしはぐりこの横でどんぐりの工作をした。
ぐりこはどんぐりを少しちらりと見たけど、食べる気はないらしく、また日光浴に集中した。
やがて完成したものをぐりこに見せる。
「見て。ぐりこ。あなただよ」
どんぐりで作ったぐりこ。
“どんぐりぐりこ”だ。
どんぐりの帽子を重ねて胴体をつくり、頭と尻尾にどんぐりを使った。
なかなか上出来だ。
ぐりこと“どんぐりぐりこ”を並べて、スマホで写真を撮った。
撮った写真をぐりこに見せる。
「どう?いい感じ?」
ぐりこは、クァ、と短く鳴いた。
「まぁ、いいんじゃない」という感じ。
「投稿したらバズるだろうなぁ」
でも実際にはそんなことをしようとは思わなかった。
ぐりこが日光浴を続けている間に、ぐりこの部屋の掃除をすることにした。
床に掃除機をかけていると、何か吸い込んでしまった。
掃除機を止めて見てみると、それはなんだか半透明で長いものだった。
「これ……もしかして」
ぐりこの皮だ。
「さらさん!」
わたしはそれをすぐにさらさんのところに持って行った。
「どうしよう。ぐりこ、もう脱皮しちゃったみたい」
言うと、さらさんが笑った。
「ここに来てから、毎晩脱皮しているよ」
「え? 脱皮は龍穴でするんじゃないの?」
「それはただの成長のための脱皮だよ。ぐりこが白銀になっていないもの」
なるほど。
確かに。
「これ、もらってもいい?」
「いいよ。今までのもとってあるよ」
わたしはそれを綺麗に畳んで大事に仕舞っておいた。
縁側に戻ると、ぐりこはまだ寝そべっていた。
どうやら熟睡しているようだ。
「ぐりこは、ぐぅたらねぇ」
そう言って近づいて、気が付いた。
ぐりこが、“どんぐりぐりこ”を前足で抱きしめて眠っていた。
わたしはできるだけ静かに、その姿をスマホで撮った。
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