「蜂つきわたあめ」「1票とベクトル」「もちゃぷきん」——ほしわた氏の作品の中でも、これは最もジャンル直球の一作だ。異世界転移×三角関係×女子高生の一人称、という設定で、対象読者がはっきりしている。
綾乃の内心ツッコミのテンポが読みやすく、「なんで心臓バクバクなんだけど……」「攻略本ほしい」「情報量多すぎ」という現代語のリズムが全編を貫いている。颯真の王子様的な優しさと遥斗の荒っぽい不器用さの対比は定番だが、その定番を綾乃の内心でしっかりとさばいているので飽きずに読める。
「一番怖かったのは、はるとがいないことだった」という気づきを異世界での冒険を通して導く構造は、要するに「迷わないと分からない答え」を描くための装置として異世界が機能している。ファンタジーが目的ではなく、恋の答えを引き出すための舞台という使い方だ。
完結済み1話・8900字。颯真の「君が向かう場所は最初から決まってた」という最後の言葉が爽やかに締める。ほしわた氏の他の作品に比べるとジャンル寄りだが、それがこの作品の持ち味だ。甘酸っぱい恋愛短編を気軽に読みたい人にどうぞ。