第6話 敵を倒せるわけがない
ステッキから放たれた風は竜巻のように大きくなり、スヴァルトを攻撃する。黒い胴体に大穴を開けて、その怪獣は咆哮した。
「キシャアアアアア!」
スヴァルトは叫び声を上げる。
「ひいっ、怒ってる!」
「いいよ、効いてるよ楓ちゃん! もっと技を出して!」
「もうやだあああ!」
しかし、とりあえずさっきの感じで良いのであれば、できないことはない。
再度ステッキを掲げて叫ぶ。
「ネガティブ・アロー!」
次はステッキからピンク矢のようなものがいくつも発射され、スヴァルトに刺さる。
「シャアアアア!」
スヴァルトの声が、心なしか弱まってきた。確かに効いているようだ。
「よし、もう一息だよ、楓ちゃん!」
「ネガティブ・エクスプロージョン!」
次はおもちゃの爆弾のようなものが出てきて、スヴァルトに命中し、爆発する。
「シャアアアアアアアー!」
砂が大きく舞う。怪獣の身体が粉々になる。
スヴァルトは大きな悲鳴を上げて、倒れた。
「やったね楓ちゃん! スヴァルトを倒したよ!」
ミルク2が飛び跳ねて喜ぶ。
あの無気力だった周りの大人たちも、生気を取り戻したような顔をしている。
「あれ……俺は、何をしていたんだ?」
「私も……」
そんなことを口々に言い合い、彼らは去っていった。
幸いなことに、彼らにこの恥ずかしい私の姿は見えていないようだった。
「お手柄だよ楓ちゃん! この調子で、街にはびこるスヴァルトを全滅させよう!」
「いや……もう、いいかなって……」
私は肩で息をしながら答えた。
引きこもりに、この運動量は辛い。
再度ミルク2が前足を合わせた。
「テレポーテーション!」
そう言うと、また光が私たちを包み込みーー
周囲の風景が、公園から自分の部屋に戻っていた。
☆☆☆☆☆
「戻ってきた……⁈」
まだ信じられなくて、ベッドの上の布団を触る。確かに、この感触は私の部屋だ。
「はい、戻ってきました! スヴァルトを倒すと、戻ってこられるシステムです!」
「……明日も敵が現れたら、また強制的に戦わされるの?」
「はい、明日も明後日も、敵がいる限り!」
「ええ……」
「だってもう、楓ちゃんは魔法少女になってしまったのですから!」
ミルク2はそう言って、にゃおと鳴いた。ここだけ猫っぽくてもな。
「ねえ、教えてミルク2」
私は効いてみることにした。
「どうして、あなたはミルクの姿をしているの?」
ミルク2は再度、機械音でにゃおと鳴いた。
「それはお答えできません! ご主人様とのお約束です」
ミルク2は逃げるように前足を合わせた。
「テレポーテーション! また明日!」
光に包まれてミルク2がどこか別な場所に移動するのを、私は呆けたように見ていた。
魔法少女になっても、ネガティブな考え方は変わらない。
生きたいとも思えない。
こんな茶番は、終わらせるべきだ。
私は、黒幕に会いに行くことを決意した。
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