嘘告白されてた地味子と友達になったら、なせか急にモテ期が到来したんだが!?
蜜りんご
第1話:屋上での一幕
憧れだったクラス一の美少女、
「あの、俺、菊永さんのことが」
「無理」
「……へ?」
俺はまだ用意していた告白の文章を全文言ってない。なのに目の前にいる菊永さんは眉毛を釣り上げながら腕を組んで多分怒ってる。その顔も可愛いって違う。
(俺は今振られたのか……?告白してもないのに無理ってなんだよ)
好きだったからこそ、真摯じゃない対応をされて悲しくなった。
「あんたみたいなのがあたしに釣り合うと思って告白したの?あんたの双子のお兄ちゃんだったらOKしたけどさ。てかそもそも今あたしの時間をあんたに割いてやってるのわからないの?無理って言ってるでしょ。はい、終わり」
そう言って屋上の扉を開けて菊永さんは去っていった。バタンと後ろで響いた音が虚しい。俺はやっぱり兄には勝てないんだろうか。こんな酷い振られ方ってあるんだろうか。しばらく立ち尽くして、目から溢れそうになる涙を堪えていた時だ。
ギィ、と屋上の扉が開く音がして誰か入ってきた。なんでかわからないけど、見つかっちゃダメだと思ってパイプの裏に隠れてしまった。パイプ越しに相手の様子をそっと伺うと友達の
1年の頃から三橋とは結構仲がいいんだけど、あいつの浮ついた話は聞いたことがなかった。誰のことが好きなんだろ、そう思ってスマホを確認すると、あと2分で四時半になろうかという具合だった。
(もし三橋が振られたら、振られた同士でパーティーでも開いてやろ)
そう思っていると、扉の向こうからトントンと誰か歩いてくる音がした。俺は誰に告白するんだろ、なんて考えながら三橋の告白相手が扉を開けるのを待った。正直自分の告白ですらドキドキして心臓が破裂しそうだったのに、今度はバレちゃいけないっていう謎の緊張でドキドキしている。カチャと音がしてドアノブが回されスカートを履いた誰かが入ってきた。
「鶴川さん、今日は来てくれてありがとう」
「いいえ……」
鶴川さんって誰だ。あいつがいるバスケ部のマネージャーにそんな子いたっけ。また影からそっと覗くと、そこにはクラスで暗いだとかそんな理由で浮いてる地味子ちゃんと呼ばれてる子が立っていた。
(え、意外。地味子ちゃんなんだ、好きなの)
そう思ってパイプの影から2人の告白を見守る。バレちゃいけない、なんて思って隠れたけどなんだか悪いことしてる気がしてきた。まぁ2人とすれ違って、2人相手に気まずくなるよりマシか。
「本題、なんだけど……鶴川さん、俺と付き合ってください」
告白の定型文を言い切れたことに羨ましいと思いつつ、鶴川さんはなんて返事するんだろって思う。もちろん友達だからうまくいって欲しいという思いと、なんで俺は告白する機会さえ与えてもらえなかったんだろという思いがせめぎ合う。
「……私なんかで良ければ」
(おおーーー!!!告白成功じゃん!)
友達の告白成功という事実に内心めっちゃ喜んでたら、三橋がなんか俯いて肩が震えてるのが目に入った。
「くっくっく、はははっ」
急に笑い出したあいつに多分俺も鶴川さんも困惑してたと思う。なんでかっていうと笑い方が喜びからくる笑い方じゃなかったから。
「はぁー……笑った笑った。おい、もう出てきていいぞ」
そう三橋が言うと、ドアがバンって開けれてゾロゾロと3人くらいの男子が現れた。何事と思って息を潜めた。
「え、と……三橋くんと、どちら様?」
やっぱり鶴川さんも困ってるみたいだった。
「まぁまぁ。俺らはどうでもいいっしょ?」
三橋の友達がそう言ったけど、どうでもよくはないだろって思った。そして三橋と俺の知らない三橋の友達との会話は続いてく。
「俺が鶴川さん……いや、地味子チャンのこと好きだって?んなわけねぇじゃん、バーカ。まさか俺が本気で告白してると思った?その見た目で?生憎俺B専じゃないんで。でもよかったじゃん、告白されるっていう経験できて」
「そうそう。地味子ちゃん?的にはいい体験だったんじゃない?」
友達の一人がそう付け足す。俺は三橋がこんなやつだったなんてことが信じられない上に、怒りで飛び出してしまいそうだった。今飛び出してもいいことはないし、じっとしてる方が多分いい。
「告白されてる様子は撮ってたからこればら撒こうぜ」
「え、おま天才か!?」
そんな会話が屋上の扉越しに聞こえた。なんて奴らだ。告白をなんだと思ってるんだ。告白する側も告白される側も、それ相応の準備をしてきてるっていうのに。この時の俺は、もう自分が振られたことなんて頭の片隅に消えていた。
ともかく俺は、呆然と立ち尽くしている地味子ちゃんこと鶴川さんを慰めにパイプの裏から立ち上がったのだった。
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