ヒーロー部(非公認)に入部した俺の日常

さとうがし

ヒーロー部(非公認)の日常

 俺の名前は前原栄一。英勇高校一年生だ。

 特にこれといった特徴はない。ごく平凡な見た目をしている。


 学校でも目立たず、かといって問題行動を起こすわけでもない。

 誰の記憶に残らない。その他大勢の高校生の一人。


 世間の目から見ると、俺はそう映っているだろう。

 だけど、俺には裏の顔がある。それは――


「た、助けて……」


 学校の旧校舎一階にある男子トイレ。そこは人も少なく、ボロボロの旧校舎があるだけ。現在は新校舎に続々と教室が移転しているが、まだまだ旧校舎で授業が行われている。


 その一階東側のトイレ周辺は空き教室だらけで人気がない。

 だからなのか、いじめの現場としてよく使われることがある。


「助けて~? なんつー情けない声出してんだよwww」


「な~! 超ダサくて笑えるんだけど~!」


 男たちの嘲笑がトイレにこだまする。

 一人の男子生徒が五人に囲まれ、殴る蹴る、暴言を浴びせられている。


「もう一発殴らせろよ。いいよな?」


「……」


「そこは笑って『はい』って答えろよ、クソが!」


 リーダー格と思わしき男が輪の中心にいる男子生徒に手をかける直前、一人の人間の手によって防がれてしまう。


「そこまでだ」


 急に現れた謎の男によって周囲は動揺。

 それもそのはず。男の格好はあまりにも奇天烈であり、ふざけているのかと思われても仕方がない。


 奇怪な仮面、全身ピチピチのタイツ。股間もっこり。

 ひらひらと揺らぐマント。まるでヒーローのような、そんな格好をしていた。


「てめぇっ! 噂のヒーローだな!」


「そうだ。私は……」


 ヒーローの格好をした男は手を振り払い、ポーズを決めていく。


「あるとあらゆる悪を打ち払い、正義を実行するヒーロー! 私の名はジャスティス・英勇! ヒーロー部(非公認)所属の悪を成敗するために生まれてきた、生粋のヒーローだ!」


 決めポーズが綺麗に決まった。周りの男たちは最初ポカンとしていたが、すぐに笑いに変わった。


「ひ、ひーろ~www」


「ダッセェな、おいwww」


「ちょっ、笑わせないでくれよwww」


 お腹を抱えて笑う男たちをよそに、ジャスティス・英勇は膝を曲げていじめられていた男の子に手を差し出した。


「私が来たからには安心してくれ」


「……」


「ここは私に任せてくれ」


「う、うん……」


 男の子はトイレから逃げ出した。


「てめぇ……俺たちのサンドバッグを逃がすとはいい度胸だな」


「君たちのやっていることは言語道断! ジャスティス・英勇がお灸をすえてやらねばならん」


「お前がwww 笑わせないでくれwww」


 笑うリーダーにジャスティスの拳が飛ぶ。

 クリーンヒット。リーダーは吹っ飛び、個室のドアを突き破ってノックダウン。


「ジャスティス・パンチだ」


「てめぇっ! よくもやってくれたな!」


 集団でジャスティス・英勇に襲いかかるが、僅か三秒で制圧されてしまう。

 殴られ、蹴られ、投げられ、トイレの床で伸びるいじめっ子たち。


「正義執行完了」


 ジャスティス・英勇はまたしても決めポーズを決め、トイレを後にした。

 そして、人気のない屋上にやって来た彼は仮面を外した。


「ふぅ……終わった」


 そう、ジャスティス・英勇の正体は俺こと前原栄一。

 今日もヒーロー、やってます。










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