ep33:美月視点⑬

 この世界の住民は、たいてい1つくらいは属性を持っている。

 でも、何の属性を持っているかは、専用の魔道具を使わないと分からない。

 魔道具は高価で、買えるのは王族や貴族くらい。

 エトワール国立学園には「属性鑑定クリスタル」があって、新入生たちはまず属性を調べてから魔法の授業を受ける。

 平民しか入学しない冒険者養成スクールに、鑑定クリスタルは無い。

 それは、光属性を隠したい私には好都合だった。


「属性なんてもんは、魔法を使えるかどうかだけ分かりゃいいんだよ」


 新入生は全員受ける初級魔法の授業を始める前、講師のヒューゴさんはそう言った。

 属性を持っていても、魔力値が低かったら使えない。

 属性と魔力があっても、イメージできなければ使えない。

 魔法とは、属性・魔力・イメージが揃ってこそ使えるものだった。


「とりあえず、俺が使ってみせるから、イメージを覚えな」


 言いながら、ヒューゴ先生は訓練場に並べられた的の1つに片手を向ける。

 その掌から、野球ボールサイズの火の玉が飛び出して、的の中央に激突して燃え上がらせた。


「これが初歩の【火球】。サイズはこれより小さくてもいい。火が出れば火属性持ちってことだ。やってみな」


 ヒューゴ先生に言われて、生徒たちはそれぞれの的に片手を向ける。

 私は自分に火属性が無いことを知っているけど、ここで言うわけにはいかないので、皆と同じく片手を的に向けた。

 その隣で、アランが真剣な顔で的を見つめて片手を向ける。


(……ああ、やっぱりアランはかっこいい……)

「そこ、人を見ないで的を見な」


 推しにデレていた私に、ヒューゴ先生のツッコミが入った。


 一方、アランは的に向けた片手から、ピンポン玉サイズの火球を出現させた。

 それは的を燃やすには至らなかったものの、間違いなく火属性がある証だ。

 ……まあ、パーティを組んだときから、私には分かっていたけどね。

 アランは、火属性を持っている。


「火を出せた奴は冒険者証を出しな。「火魔法使い」って登録してやるよ。毎日眩暈がするほど魔法を使ってりゃ、魔力が上がってもっと上の魔法も使えるようになるぞ」


 ヒューゴ先生の周囲に、生徒たちの一部が集まる。

 火属性持ちの生徒たちの冒険者カードに、魔法の属性情報が追加された。


「次は水魔法を見せてやるから、よーく見ときな」


 ヒューゴ先生は、再び片手を的に向ける。

 今度は掌から野球ボールサイズの水の玉が飛び出して、水圧で的を砕いた。

 簡単そうにやってるけど、私にはそれがかなりの技術を要するものだと分かる。

 魔法のコントロール能力に優れていなければ、水球を的に当てても濡らすだけだもの。

 それにこの先生、火と水の2属性持ちだ。

 さすが、魔法の講師を務めるだけあるわね。


「これが初歩の【水球】、水が出れば水属性持ちだ。やってみな」

「出た! ……でも、的が砕けない~」

「的を砕くなら小さく出してスピードをあげるといいぞ」

「スピード……あ、はずれちゃった」

「毎日練習してりゃ、そのうち当たるようになるさ」


 水属性持ちの私は、ここにきてゲームをやってた頃と同じ難関にぶち当たる。

 水の玉をゆっくり飛ばせば当たるけど、砕けない。

 スピードを上げると、はずれてしまう。

 ゲームでは陽太に的当てミニゲームを手伝ってもらったけど、今ここに私の代わりに魔法を使ってくれる人はいなかった。


「ルナ、元気出して。練習すれば当たるようになるよ」


 陽太がいないことを寂しく感じていたら、落ち込んでしまったと思ったアランに慰められた。

 今の私に、魔法を手伝ってくれる兄はいない。

 でも、励ましてくれる推しがいる。

 コントロールが悪いなら、アランみたいに努力をすればいいんだ。

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