ep30:華蓮視点⑩
「お父様、エトワール孤児院にお料理を差し入れてもいいかしら?」
「勿論だよ。カレンは優しい子だね」
ソレイユ留学の前に、私は孤児院へ堂々と行ける口実を作った。
6歳になったルナとアランは冒険者ギルドの採集系クエストを日課にしていて、昼間は不在なのは知っている。
だから、直接会えなくても、美月ちゃんなら私だと気づいてもらえるかもしれないヒントを料理に託した。
「料理長、ちょっと調理場の一部を貸してね」
「はいお嬢様」
ゲームのカレンには出来なくて、私には出来ること。
それは、料理。
ゲームのカレンは「料理は使用人が作るもの」という考えで、自分で作ることはなかった。
私は、日向家のおばさんに習った料理を記憶している。
「へえ、お嬢様、珍しい物を作られますねぇ」
「コロッケっていうの。できあがったら食べてみてね」
私が作るのは、肉じゃがコロッケ。
定食屋「日向」の人気メニューだ。
この世界には、醤油に似た調味料「セーユ」がある。
もちろん、砂糖もある。
ジャガイモやタマネギもある。
ミノタウロス肉は黒毛和牛みたいなお肉。
卵と小麦粉もあるし、パン粉はハードパンから作れる。
ジャガイモを茹でながら、お肉とタマネギを風魔法で細かく刻む。
ハードパンも風魔法で細かく刻む。
刻んだお肉とタマネギを炒めて、セーユと砂糖で甘辛く味付けしたら、茹で上がったジャガイモに混ぜ込んで潰す。
マッシュポテトくらいに潰れたら、小判型に丸めて成型する。
小麦粉、とき卵、パン粉の順にまぶして衣をつける。
あとは、熱した油で衣がサクッと揚がれば完成。
「おお! これは美味いっスね!」
料理長も大喜び。
今後ミシオン家の食卓にも並ぶ予感がする。
日向のおばさんに、お料理を習っていてよかった。
おかげで転生先でもコロッケが食べられるよ。
風魔法でタマネギを刻むと、目が痛くならないから楽でいいわ。
◇◆◇◆◇
「趣味で作ってみましたの。皆さんで食べてみて下さいね」
「ありがとうございます!」
「わあっ! いい匂い!」
公爵家の馬車で孤児院を訪れて、コロッケ盛りのバスケットを渡したら、スタッフも子供たちも大喜びだった。
ルナとアランは出かけていて不在だけど、このコロッケなら冷めても美味しく食べられるから大丈夫。
「いっぱいあるから、ルナちゃんとアランくんの分も、残しておいてね」
「「「はーい!」」」
孤児院の子供たちにお願いしたら、元気な声が返ってくる。
不在の2人の分は、スタッフの女性が、ササッと取り分けて戸棚に入れてくれた。
ルナ……美月ちゃんなのかな。
コロッケ食べたら、私だと気付いてくれるかな。
切ない思いと期待を抱きつつ、私は孤児院を出て馬車に乗り込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます