散花

アメーバ・プロテウス

死のうと思った。

ただ飛び降りれば全て終わると思っていた。

心地良い夜風が頬を撫でると不思議と恐怖が湧いてきた。

昨日はあんなにも悲しみ苦しみ打ちひしがれたのに、まだ生存本能は私を生かそうとするのかとこの身体が憎くなった。

月明かりに照らされ頬がきらきらと光る。

私は今迄を想起していた、子供の頃に遊んだ記憶だとか、友達と一緒に何でもない日常を過ごしただとかノイズの様に脳に駆け回る。だが同時に生きていれば辛いことの総量が多い事も知っている。

仕事で上手く行かなかっただとか、あの人は実は私を嫌っていただとか、自分が何でもない存在だと自覚するだとか、この世は悪い事だらけだ。

自分より辛い環境にいて必死に生きている人がいるのも知っている。

だから私は私に叱咤する。この程度で死ぬのか?この程度で悲劇のヒロインごっこか?と

私の中の冷静な私が私を責め立てる。

もうイヤだ!何故こんな思いをしなければならないのか!あぁやっぱり生きてるからだ。

死ねばいいんだよね。

そしたら全部ゼロになるから

私は腰掛けた、この恐怖も最後と思えば愛おしい。

手がガクガクと震えている。塗ってある赤のネイルも爪が割れていて綺麗じゃない。

最後は美しくありたいと思った。

それと同時に笑う。どうせぐちゃぐちゃなのにそんなこと気にしているなんてと。

あと少しだ、あと少しで終われるんだから

一歩勇気を出せば全て終えて楽になれる。

脚が震える、私が私じゃないみたいだ、怖い怖い凄く怖い

私の目に私の足跡が映る

ははっ、何びびってんだろう。

もういいや


死んじゃえ、こんな世界


地上で1輪の花が咲く。

その赤はぬらりと光って妖しく笑った


そんな気がした

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散花 アメーバ・プロテウス @Amoechlo-chlorella

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