第38話 専用武器
「おっちゃん、ナガレの武器の具合はどうよ?」
挨拶代わりに、進捗具合を尋ねながら店に入ってみると、レジで突っ伏しながら、寝ていたドワーフのおっちゃんを見つけた。
「ぐがあああ····」
寝てやがるな。
どうするかと考えているとナガレがおっちゃんに近づいて行った。
ナガレの様子を見ていると、『起きろ!』とおっちゃんを小突いていた。
「ぐがっ!····な、なんだ?ワシの酒はどこいった!」
どうやらまだ、寝ぼけているみたいだった。
「よう、おっちゃん武器の具合はどうよ?」
「あぁ····お前らか」
もう寝ぼけてはいないようだが、疲れているようでアクビをしていた。
まぁ当たりめぇだよな。
「で、どうなのだ!?」
ナガレが遠慮なしに聞いていた。
「おう、心配いらねえよ。無事に完成させたぞ!ちょっと待っとれ」
店の奥へ消えてった。
待ってる間、アカツキ達とじゃれていると『待たせたな』と2本の鞘に収まったククリナイフを持って戻ってきた。
おっちゃんは、レジに丁寧に置いていった。
「ナガレ、抜いてみろよ」
「ああ」
ナガレが片方のククリナイフを掴もうとした直前、異変が起きた。
ドックンッ····
「ん?」
「あ?」
「な、なんだ!?」
ナガレとあたしはそこまででもなかったが、制作者のおっちゃんは困惑していた。
ドックンッ····
もう片方のククリナイフも共鳴するかのように脈動し始めた。
「なぁ、おっちゃん何がどうなってんだぁ?」
「し、知らん!ワシも色々な魔物の素材で武器を作ってきたが、こんな現象は初めてだ!」
あたしとおっちゃんが眺めていると、ナガレは何の躊躇もなく、掴もうとしていた方のククリナイフを鞘から抜いた。
「ナガレ、なんともねぇか?」
「ああ」
その形状は前に買ったククリナイフとそれほど差はなかった。
「おっちゃん、何か細工かなんかしてねぇのか?」
「ワシは特になにもしておらん。ただ········お前さん、武器に魔力流してみろ」
ナガレは『魔力を流す?』と、首を傾げてきた。
どうやら、流し方が解らなかったようだ。
「ナガレ、魔法を使うときは、手に集めんだろ。その要領で武器にやるんだ」
ナガレは頷き、魔力を流し始めると、ククリナイフの刀身が鋭利になり、黒刀へと変化した。
「めっちゃかっけーぞ」
「ふむ」
「ワシも武器のこんな反応は初めて見た」
「知ってて、魔力を流せって言ったんじゃねぇのかよ」
「いや····せいぜい、その武器の様に形が少し変わるくらいかと思ったんだが、色が変わるとは思わなんだ」
あたしとおっちゃんが話しているうちに、ナガレはもう片方のククリナイフも同じようにしていた。
すると、今度は真逆の白刀になっていた。
あたしはククリナイフを【鑑定】してみた。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
武器名
:白夜&極夜
説明
:ナガレの爪とミスリルを素材として作られた、ククリナイフ。
:ナガレの魔力を浴びたことで本来の姿となった。最早切れぬ物無し。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
『最早切れぬ物無し』ってよ····。
「すげぇな」
能力的なものはねぇが、あたしの武器より性能上だよな。
「ナガレ、武器の名前なんだが····」
「白が白夜で、黒が極夜だ。掴んだときに、頭に流れ込んできた」
は?どういうことだ!?
「お前さん!喜べ、ソイツはもう完璧にお前の専用武器になった証拠だ」
「おっちゃん、どういうことだ?」
おっちゃんの説明を簡単にいうと、こんな感じだ。
あたしが持っている血刀包丁や血染めの斧みたいに、呪われ武器は、認められれば誰でも使える。
だが今回のように、武器から名前を告げられたものは専用の武器になり、ソイツにしか使えなくなる。
って感じみたいだ。
これは本人の素材を使ったからなんだろうな。
「とにかくよ。良かったなナガレ!」
「ああ」
「おっちゃんもありがとうよ。代金なんだが····」
あたしは【収納】に手を突っ込んだ。
「お前【収納】持ちだったのか!····それより代金だったな。それなら····」
おっちゃんが代金を言う前にあたしは金貨30枚を出した。
「お、お前これは貰いすぎだ!とんでもない素材を出したのはお前達だ!!今回は金貨3、4枚くらいで充分だ」
「ダメだ!今回あたしらは無茶な依頼をしたはずだ!それをおっちゃんは成し遂げたんだ。これで今日は酒でも買って飲んでろよ」
「おい!話を聞け!」
あたしらはおっちゃんの反論を無視して『じゃあな』と言って店を後にした。
後ろからは未だに、文句を喚いているおっちゃんの声が聞こえてくる。
だがそれも、疲れてきたのか、次第に霞んでいき········最後に『ありがとよーー』の叫びだけが届いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ナタリーSide
午後3時を過ぎた頃。
私は副ギルドマスター代理に任命したカンナとギルド長室でこの後、シノブさん達と会うための準備をしていました。
シノブさん達への謝罪からのこの四日間、私に出来うる人脈を使って、ようやくそれらしい情報を入手することが出来ました。
「この情報が彼女たちの役に立てば、いいのですが····」
「大丈夫ですよ、ギルマス!」
「だと、いいのですがね。ただ、その場所が東の大陸なんですよね····」
私が入手した情報は、学園の理事の1人がもたらしたものでした。
彼は知人が仕事で東の大陸からこの大陸に帰ってきたときの、土産話で聞いたと言います。
「信憑性は薄いかもしれませんがね····ところでそのシノブさん達は今はダンジョンですか?」
「はい、午前中にダンジョンに入られたみたいです。受付の方にもシノブさん達が戻られたら、ここへ連れてくるように、伝えてあります」
カンナの報告を聞き終え、私は窓から外を眺めました。
「そうですか。····確か彼女たちのダンジョン調査は今日まででしたね。本当にあの件から助けてもらってばかりです」
私はギルド長室から見える、ダンジョンの入り口を眺めながら、独り言を呟き、彼女たちの帰りを待つことにしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます