第34話 ナタリーの災難

ドロップアイテムの査定が、数人の職員で迅速に始まってから30分後、あたしとナガレは眺めているのが飽き、ナタリーの許可を取ってギルドのホールで待つことにした。


テーブルで飲み物や軽食を摘まんで待っていると、学園の学生達がちらほらと視界に入ってきた。


中にはチラチラとこっちを見てくる視線、『声かけようぜ』など毎度のことながら、鬱陶しい空間になってきた。


さらに30分、鬱陶しい奴らを軽めの【威圧】で黙らせていると、職員が『終わりましたのでおいでください』と声を掛けてきた。


「やっと終わったか」


腕を組みながら目を瞑っていたナガレが、あたしを見ながら言ってきた。


「すまん、こんなに掛かるとは思わなかった。先に帰らせるべきだったな」


「気にするな、これも慣れだ。シノブと一緒にいるには必要だ」


面と向かって言われたことに、あたしは目を逸らし『そ、そうか』としか言えなかった。


個室に戻ってみると、カンナとナタリー、あとハゲが戻って来ており、集められていた職員はいなくなっていた。


「待たせたわね、シノブさん。····どうしたの体調でも悪いの?顔が赤いわよ」


「な、なんでもねぇ····早く終わらせてくれ」


あたしは誤魔化すように、席に座ろうとしたが、不意にナガレが小声で話しかけてきた。


「シノブ、マジックバッグから我とシノブの匂いがしないぞ」


あたしは即座にマジックバッグに【鑑定】を使った。


前回、見たときには《マジックバッグ(中)》と示されていたのに、今は《マジックバッグ(小)》となっていた。


あたしが座らずにいると、ナタリーが『どうしたの?』と聞いてきた。


「ナタっ、いやギルドマスターさんよ」


ナタリーはあたしの雰囲気が変わったことに気づき『な、何かしら?』と戸惑っていた。


「これはどういうこった?なぁ、なんで違うバッグがここにある?」


ゆっくり、ナタリーの顔を見てみると『えっ!?』と困惑した顔をしており、カンナは何がおきているのかわかっておらず、ハゲを見てみると顔を引きつらせていた。


「おい!ハゲ!!ナガレのマジックバッグはどうした!!!」


「っ!キサマ何を訳のわからないこと言っているんだ!失礼にも限度があるぞ!!」


「シノブさん落ち着いて!いったいどうしたの!?ちゃんと説明してくれないと、これ以上の暴言は看過できないわ」


ナタリーに肩を掴まれて忠告され、少し冷静になることができた。


「········ふうっ、なぁギルドマスター、あんたバッグ渡してから触ったりしたか?」


「いえ、タゲハさんに渡してからは、今まで触っていないわ」


「カンナさんは?」


カンナは勢いよく首を横に振っていた。


「オッサン、あんたは鑑定を1人でやって、ここまで持ってきたのか?」


「ああ、私が責任をもって、最後までやらせてもらった」


あたしは『そうか』と不敵に笑った。


「それでシノブさん!ちゃんと説明してちょうだい。これで何もなかったなんて事にでもなれば、ただでは済まされないわよ」


ナタリーは鋭い目付きで警告してきた。


「そうだぞキサマ、ここまで言ってどう落とし前をつけるつもりだ!」


ハゲが勝ち誇った顔で便乗してきた。


あたしは【鑑定】が使えることを話すことにした。


「あたしさ【鑑定】が使えてよ、頼んだバッグがマジックバッグ(中)って事もわかってんだ」


「キサマ!そんな見え透いた嘘をーーー」


「タゲハさん!今は黙ってて下さい。では、シノブさんはこれが違うと言うのですか?」


「ああ、マジックバッグ(小)になってる」


ナタリーは深呼吸してから、ハゲに視線を向けた。


「タゲハさん、彼女はこう言っていますが、実際のところどうなのですか?このマジックバッグは(小)なのですか?」


「ギルマス!わたしが何かしたとでもお思いですか!確かに鑑定の結果そのマジックバッグは(小)です。ですがそれがなんだと言うのですか!?その女がデタラメを言ってるに決まってます」


「っーーー」


あたしは文句を言い掛けたがナタリーが手で制してきた。


「シノブさんも少し冷静に、今は対等に話を聞いています。確かにシノブさんがデタラメを言っている可能性もあります。ですのでここは」


ナタリーはカンナに視線を送り指示を出した。


「カンナ、確か昨日、鑑定済みの物があったわよね。その一部と一覧を誰かと協力して持ってきてちょうだい」


カンナは『わかりました』と言い部屋を出ていった。


「ギルマス、どうするおつもりですか?」


「決まってます。検証するんですよ。シノブさんが本当に鑑定できるのかを。シノブさんはそれでよろしいですか?」


「ああ、かまわねぇよ」


あたしが躊躇なく承諾したことでナタリーは頷いた。


「本気ですかギルマス!こんなの時間の無駄です」


「いいじゃないですか、シノブさんが嘘を言っているのなら、罰すればいいだけですよ。それともタゲハさんはこのまま調べられると何か都合が悪いのですか?」


「そっそんなことはありません」


ハゲは明らかに挙動不審になっていた。


自白してるようなもんだろこれ、アホらしくなってきたな。


しばらくすると、カンナがさっき手伝っていた職員を連れて戻ってきた。


「じゃシノブさん、お願いします」


あたしは片っ端から【鑑定】を掛けていった。


結論から言うと、ハゲがやらかしていた鑑定偽装の証拠が出るわ出るわ。


他の職員が担当した物は、あたしの鑑定結果と記録が一致したが、ハゲが鑑定したヤツだけが、何個も嘘の結果になっていた。


今回、試しの確認で見た書類でこれなのだ、他の書類のことを考えたナタリーは、顔を青くして額を押さえ『北地区ギルドの信用が』と嘆いていた。


最後のダメ押しをナタリー自身に【鑑定】をして、ステータスを言い当てた結果、あたしの発言が正しいことが証明されたのだった。


尚、年齢とスリーサイズを言おうとしたら『信じますから』と顔を赤くして止められた。


嘘や今までの犯罪が露見したことで言い逃れが出来なくなったハゲは蒼白な顔で連行されていった。


最終的に散々な結果になり、改めての謝罪とあたしらの報酬やらは明日、渡されることになった。


余談だが、マジックバッグだけは、その日のうちに返してもらえたことで、ナガレは嬉しそうにしっぽを振っていた。

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