第21話 じゃあな
「シノブ、領主様がお呼びだ。ついてきてくれ」
ギルドマスターは拳が赤く染まるほど握りしめ、悲痛な顔をして言ってきた。
「断るっつったらどうなんだ?」
「それは辞めた方がいい。これは要請じゃなく命令だ、逆らえば国にいられなくなる」
そん時は国を出ればいいが、まぁ貴族なら、それなりの情報はあるはずだ、【ゲート】や【テレポート】を使える奴くらい知ってるだろ。
「わかった」
「シノブさん!」
シビル達は思案顔で見ていた。
「この後、国の奴らがあたしのことを聞いてきたら、ウソをつかねぇで答えてくれて構わねぇからな」
1人1人の顔を見て、まだ言えていないことを満面の笑顔で伝えた。
「じゃあな」
「くぅ~ん」
別れを告げギルドマスターの後をついていき、お互いに一言も話さず歩いていると、領主の館が見えてきた。
ギルドマスターは門番に二言三言伝えると門が開き通された。
それにしても、貴族ってのはでけぇ所に住んでんだな。
庭なんて、学校の校庭よか広いんじゃねぇか?
表玄関をギルドマスターが開け、ホールには、ここの執事と名乗る男がいた。
広い部屋に案内され『只今、旦那様をお連れします』といい出ていった。
ギルドマスターが下座にあるソファーに腰掛け、あたしは躊躇なく上座にある椅子に座り抱えていたアカツキを膝にのせた。
その行動にギルドマスターは驚き、慌てて立ち上がり注意してきた。
「シノブ!そこは!」
掌を前にだし、ギルドマスターの言葉を止めた。
「そのくらいは知ってるさ。オッサンの顔を立てて、ここまでついてきたが、ここからは好きにやる。その許可は貰ってんだよ」
「許可だと?シノブお前は」
ギルドマスターが何かを言いかけた時に執事が戻ってきた。
あたしを見た執事は案の定、激怒した。
「きさま!そこは旦那様以外座ることは許されない。何を考えている!」
「うるせぇ!さっさと用件をすませろ!」
執事が『きさま』と言いかけた時に後ろから別の男が被せてきた。
「シモンが言っていたように、態度がなっていない奴だな」
「申し訳ありません旦那様。只今、こやつめを」
「いい、それより貴様、シノブと言ったか?」
「馴れ馴れしい奴だな!まずはテメェから名乗れ!」
執事の浮かんできた血管が文字通りブチ切れそうになっていた。
ギルドマスターも顔の血の気が引いていた。
「話が通じん奴のようだ。なら此方も、それなりの矜持でいかせてもらおう」
領主が廊下に指示を出すと数人の鎧をきた奴らが、2つある扉から流れ込んできた。
「力ずくって訳か、そっちの方がわかりやすいなぁ」
「待て、シノブ」
ギルドマスターが間に入ってきた。
「領主様!シノブと敵対してはなりません!」
「シモン、どういうつもりだ!」
「シノブには、まだ問い質さないとならないことがあります」
ギルドマスターは真剣に覚悟が決まった顔をして聞いてきた。
「さっき許可を貰ったと言っていたな。誰からだ!目的はなんだ!」
しかたねぇ、ここまできたら話すか。
あたしはこの世界に来るまでの経緯を話した。
誰もが言葉を失っていた。
そんな中、ギルドマスターが発した。
「お前は、異世界から女神によって転生し、元の世界に帰るために、これから旅に出るのか?」
「ああ、その邪魔さえしなければ、こっちから何かするつもりはなかったんだがな」
領主が激怒しながら話に割って入ってきた。
「そんな戯れ言を信じられるはずがなかろう。騎士達よ!シモンを押さえろ。あの女は吸血鬼だ!ここで仕留めろ!」
その命令でギルドマスターは押さえられ、1人の騎士が突っ込んできた。
あたしは騎士の懐に潜り、裏拳でオーク戦のときよりも軽く殴った。
つもりだったんだが、あろうことか騎士は壁に激突し、勢いが殺されず何枚もの壁を貫通していき、外まで吹き飛んでしまった。
は?これでもダメなのか!脆すぎんだろ!
初めて人を殺ってしまったが、全く罪悪感もわかなかった。
覚悟を決めて、アカツキに指示を出した。
「アカ、巻き込んでごめんな。ギルドマスター以外殺ってくれ」
アカツキは『ガアアア』と鳴き、元の大きさに戻り『気にしないで』と伝えてきた。
誰もが微動だにできなかった。
゛ガアアアアアアア〝
と【咆哮】で全員の動きを完全に止め蹂躙が始まった。
あたしは領主の襟を掴み、壁に空いた穴を通り外へ向かった。
領主は喚いていたが無視し、左手に《ベレッタ92》を作り備えた。
外に出てみるとそこには数十人の騎士達が剣を抜いて待機していた。
「こっ侯爵様!」
1人の騎士が叫んだ。
右手で引きずっていた領主が、笑いだし言い放った。
「これでキサマは終わりだ!彼らはこの国で1番の使い手、騎士団長が率いる第一騎士団だ!」
それを聞いたあたしは
「そうか」
と言い、1番先頭にいる、騎士の眉間に血弾を撃ち込んだ。
゛パン〝!
1発の弾丸から始まり、そこは瞬く間に血の海へと変わった。
騎士を皆殺しにしたあたしは、領主を目線まで持ち上げた。
「こっこの化物め!こんなことして只で済むとおもーー」
「少しダマれ!」
軽めの【威圧】で黙らせ、言ってやった。
「この惨状はテメェの招いたもんだろうが、正義感か手柄が欲しかったのか、どちらにしてもテメェの下らない欲でコイツらは巻き込まれたんだよ」
「ひっ」
【魅力】を使い虚ろな目になった領主に尋問を始めた。
「この国に【テレポート】か【ゲート】を使える奴はいるか?」
「いません。そのような魔法は聞いたこともありません」
ちっ!この国はハズレか。
「国境を越えるための許可証を作って持ってこい」
「わかりました」
領主を離し、アカツキの所へ戻った。
そこには全く、覇気がない顔で座り込んでいたギルドマスターがいた。
「よう、オッサン」
「しっのふ、じっじぶんが···なにを···やったのか···わかってる···のか?」
辿々しい言葉で言ってきた。
なにも言わずにただ、ギルドマスターを見ていた。
「おっおれ···もこ···ころす···のか?」
「オッサンは殺さねぇよ」
【魅力】を使い記憶を改竄した。
「その代わり今日のことと、あたしのことは全て忘れろ。このままギルドへ戻れ」
ギルドマスターは虚ろな目をしたまま領主館を後にした。
丁度、領主が許可証を持って戻ってきた。
あたしは近くの死体から剣を取り領主に渡した。
「誰かが来たら、ソイツの前で自害しろ」
命令を下して、自身とアカツキについた血を【洗浄】で綺麗にしてから、領主邸を後にした。
「アカ、この街ともお別れだ。アカは行きたいところあるか?」
「くぅ~ん」
『主についていく』と伝わってきた。
アカツキを撫でながら笑って言った。
「そうか、なら、学園都市にでも行ってみっか!そこなら、使える奴がいなくても、知識が集まるみてぇだからな、誰かが知ってるかもしんねぇな」
門を潜り街を出て、アカツキを抱えたまま、国境を目指し走った。
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