第19話 この世界で初めての
「では、シノブさん報酬をお渡ししますので、部屋を用意してあります。そちらに移動しましょう」
「······?ここで渡せばいいんじゃね?」
受付嬢は前屈みになり小声で話してきた。
「大金なので、説明もありますし、個室の方がいいと思ったのですが、どうしますか?」
説明を聞いて納得し移動した。
あたしが用意された個室で待っていると、先程の受付嬢と知らない中年男性が部屋に入ってきた。
「こちらは副ギルドマスターです」
「初めましてだね、ここの冒険者ギルドで副ギルドマスターをしている、リュックと言います」
「おう、あたしは忍だ。こっちがアカツキだ」
「くぅーん」
「カワイイ子ですね。後で撫でさせてください」
許可を出すと副ギルドマスターは喜び、隣の受付嬢は羨ましがっていたからついでに許可を出した。
「それではこちらが、今回の報酬になります」
受付嬢は大きめの袋と金貨2枚を載せたトレイをテーブルに出した。
「では、説明しますね。今回シノブさんは、依頼報酬とキング討伐の報酬、キング素材の代金で構わないと聞いています」
あたしは頷いた。
「ですがそうしますと、他の冒険者の方達と分配する際、中途半端になってしまうので、勝手ながらこちらで改めて、このようにしてみました」
簡単にまとめると、他の冒険者にはそれぞれ、Bランクパーティー1組には大銀貨4枚、Cランクパーティー5組にはそれぞれのパーティーに大銀貨2枚ずつ分配したらしい。
あたしは別枠で、今回想定外のジェネラル2体分で金貨2枚、国宝級の武器とその他の武具を譲ってくれることもあり、金貨100枚にしたらしい。
「ここからは私が話しますね。本来であれば、ギルドマスターが話すのですが、お忙しいようで私が代わりに来ました」
なるほど、このオッサンはその為に来たのか。
「まずは感謝を。今回シノブさんが譲ってくれた、武具のお陰で大分余裕をもって、運営していけます。ありがとうございます。······次は謝罪を。譲ってくれた武器に対しての報酬が少ないことに痛く申し訳なく思っています······誠に申し訳ありませんでした」
副ギルドマスターと受付嬢は深く頭を下げてきた。
「何を謝ってんのかしらねぇが、気にすんな。今回はあたしが勝手に色々したからな」
あたしは報酬の袋と金貨を【収納】に放り込んだ。
2人に視線を向けてみると、『えっ』と素っ頓狂な顔をしていた。
「どうした?そんな顔して?」
「そっ、その······本当によろしいのですか?報酬の件とか」
「さっきも言ったろ、気にすんな!これ以上クドいこと言ってっと、はっ倒すぞ」
「すっすみません」
「ほれ、約束だ!アカを、もふもふさせてやるよ」
「くぅ~ん」
二人は改めてお礼を言いアカツキを堪能しこの場は解散となった。
そのままギルドを出て、ランドー商会へ向かった。
店番していた店員に応接室へ案内され、シビルとシルが入ってきた。
「お帰りなさい。シノブさん心配しましたよ」
「はい、無事でなによりでした」
「アハハハ、悪かった」
謝った後、テーブルの影に隠れて、2人には見えていなかった、アカツキを抱き抱えた。
「2人にうちの子の紹介するよ」
「くぅ~ん」
「その子が噂の·······衛兵の方が言っておられた、シノブ様のお嫁さんですか?」
「想像以上にカワイイですね」
二人はアカツキに興味津々のようだ。
「だろ、アカツキってんだ。愛称はアカな」
二人にアカツキとの馴れ初めを話し、内容に驚かれたが、『流石ですね』とシビルに呆れられ、シルには笑われてしまった。
一通りの話を終え、冒険者ギルドでのことを話した。
その際、シビル達の助言を無視して【収納】を使ったこと、依頼の報酬を手に入れたが、金の価値が分からないことを伝えた。
「でもシノブ様はあの時、私に貸してほしいと言ってませんでしたか?」
「あん時は、勢いでなんとかなんだろって感じだったな。アハハ」
「「はあぁー」」
二人にため息をつかせてしまった。
「とにかく、商業ギルドに向かいましょう。シル、シノブさんが戻ったら、教えてあげて」
シルは承諾をし、シビルとアカツキを抱き抱えたあたしは、ランドー商会の馬車で商業ギルドへ向かった。
そういえば服の値段聞いてなかったな。
「頼んだ服の値段っていくらだ?」
「そうですね。お世話になっている所で頼んだのですが、先方も作ったことのないデザインらしく······シノブさんは、あの服で戦うと聞きました。頑丈な魔物の素材を使うのでいくら掛かるか分からないそうです」
シビルはアゴに手を当て考えていた。
「今回の報酬で足りそうか?」
あたしは心配になってきた。
「それは大丈夫だと思いますよ。お聞きした報酬であれば余裕をもって買えますよ」
なら安心だな。
着いたことをシビルに教えてもらい、商業ギルドを見て思った。
冒険者ギルドに形が似てるな、向こうは『カクカク』な感じだったが、こっちは『丸い』感じだな。
馬車を降りたとき、シビルが提案をしてきた。
「おそらく、アカちゃんは馬とお留守番の方がいいですよ。入り口で止められる可能性があります」
それはあるかもしれん。
「アカ、悪いが馬と待っててくれ。すぐに戻ってくるからさ」
アカツキから『わかった』と伝わってきた。
二人で中に入り番号札を渡され、そこまで混んでいなかったのか、すぐに呼ばれた。
シビルには馬車で服の値段を聞いたときに、金貨1枚を渡してある。
なんでも、金貨1枚で余裕で数ヵ月は暮らしていけるらしい。
いったい、いくらもらったんだ!?
戻ってきたシビルに小さめの袋と大きめの袋を渡された。
「では、私は打ち合わせに行ってきますので、後はシルに聞いてください」
「わざわざありがとな」
そこでシビルと別れアカツキを回収して、帰り道の露店で、『串焼肉1本銅貨2枚』の看板を見つけ行ってみることにした。
「お!そこの美人なお嬢さん、その子の分も一緒にどうだい?安くしとくよ」
「なら8本くれ」
「お!いいね。お嬢さんには、2本おまけしてあげるよ」
「わりぃな」
早速、銅貨16枚を渡し、この世界で、初の買い物を成功させたのだった。
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