第14話 涙

スゴい形相のまま固まっていたニコラスに、あたしは声をかけた。


「おい、大丈夫か?」


ニコラス『はっ!』と正気に戻り真剣な顔で話しだした。


「すみません。····余りにも規格外な代物でしたので、醜態をさらしてしまいました。お恥ずかしい。」


『ゴホン』とニコラスは咳払いをした。


ニコラスはそのまま、両方の武器について説明をし出した。


「というわけでして、この武器は二本とも呪いの武器です」


「へぇー」


「へぇーってシノブさん!わかっていますか?呪われているのですよ。そもそもあなた、斧持っていますけど、身体に異常はありませんか?大丈夫ですか?」


騒がしい奴だな。


「なんともないな。さっきのあんたの話からして、認められたってことでいいのか?」


「はい、それは間違いないと思われます」


「じゃ斧は貰っとくわ」


あたしは【収納】に斧を仕舞った。


「シノブさん、シミターはどうされるのですか?間違いなく国宝級の代物ですよ」


「それな、元々、今回のあたしの報酬はオークキングの素材を売った金と討伐参加の報酬だったからな。それはギルド側に渡すさ。オッサンにも簡単には言ったし、ギルドの今後の足しにでもしてくれ」


ニコラスは絶句した。


「じゃ、あたしは用事があっから行くわ」


あたしはヒラヒラと手を振り、唖然とするニコラスと職員達を残して、訓練所を後にした。


あたしはアンリに報酬のこと、帰ることを伝えるためにカウンターに寄った。


「アンリさん、今回の報酬は、いつ頃もらえんだ?」


「本来であれば、すぐにでも渡せるのですが、今回は急遽ギルマスも参加でいませんから、ギルマスが戻ってからになりますね」


「わかった。明日の夕方には親方が解体を終わらせてくれるみてぇだから、その頃に来るよ」


「わかりました。今日はお疲れ様でした。明日またお会いしましょう」


アンリは笑顔で、あたしを見送ってくれた。


アンリはホントにカワイイな、耳をピコピコさせて、しっぽブンブンさせての見送りはたまらんなぁ。


あたしはアンリに、癒して貰い、ランドー商会に向かった。


さて、シビルに頼んだ服の案を伝えねぇとな。


ランドー商会にやってきたあたしは、店番をしている店員に、シビルの居場所を聞くことにした。


「あたしはシノブってもんだけど、シビルさんか、シルさんはいないか?」


「シノブ·········!大変失礼いたしました。シノブ様ですね。代表と店長から話は伺っております。代表は存じ上げませんが、店長ならこの時間ですと、奥の事務所にいると思います。ご案内しますので、ついてきてください」


あたしは店員の後をついていった。


コンコン


『どなたですか?』


「失礼します。シノブ様がお見えになりましたので、お連れして参りました。今大丈夫でしょうか?」


『どうぞ、お入り下さい』


店員にドアを開けてもらい中に入ってみると、どうやらシルは書類仕事の最中だったようだ。


マズいタイミングで来ちまったな。


「わりぃシルさん、タイミング悪かったな。時間潰してくるよ」


「いいえ、そんなことありませんよ。それにしてもシノブ様お早いお帰りでしたね。もう依頼のほうは終わられたのですか?」


「まぁな、大したことなかったな」


「流石ですね。それでどう言ったご用でしたか?」


あたしは昨日、3人で話した服のことを話した。


「夕食の時に話した、シノブ様の服を用意する話ですね。何か希望がありましたか?」


あたしはこっちの世界でも特攻服がどうしても着たくなり、絵心はなかったが紙に簡単に図を書き、シルに見せた。


「なるほど、大体の形はわかりました。他に要望はありますか?」


「色は黒一色で背中に金色でこの文字をでっかく書いてくれ」


あたしはシルに見せた絵に文字を書き加えた。


「これはなんと読むのですか?見たこともない文字ですね」


「これはあたしの故郷の文字でな。『鬼姫』おにひめって読むんだ」


「オニヒメですか?姫ということは、高貴な意味合いなのですか?」


「いや、なんっつったらいいか、あたしのいたチーム······こっちで言うパーティーか?まぁそんな感じで、何人かでチームを作って全員女だったから姫!みたいな感じか。実際は違うと思うがな」


「私の感じたことですが、この『鬼』という字に力強さを感じました。きっとシノブ様のいたチームの皆さんはとてもお強いのでしょうね」


あたしは、シルのその言葉で当時、彩芽と考えてチームを作った光景を思いだし、自然と涙が出てきていた。


「し、シノブ様どうされました?私が何か気に障るようなことでも?」


あたしは目一杯、首を横に振った。


「違うんだ······すっげぇ嬉しいんだ。字の意味なんてわからねぇ筈なのに、あたし達が当時、考えたことと同じようなことを言ってくれたことが嬉しかったんだ」


あたしはこの世界に来て、本気で泣いてしまった。


めっちゃハズイ!まともにシルの顔が見れねーー穴があったら入りてぇーー!


内側で荒ぶっているとシルが話しかけてきた。


「シノブ様、落ち着かれましたか?」


いや!全く!!


「すまん」


「ふふっレアなシノブ様を見られたので、得をした気分になりますね」


冗談なんだろうがその言葉でますます沈んでしまった。


「すっすみません。冗談ですから!」


シルがオロオロしだしたことで、多少持ち前の精神力で回復し、話を戻すことにした。


「いやこっちこそすまん。自分でもドン引きだ」


「いえいえ、それほど大切な事だったってことですからね」


「ありがとう」


「何がなんでもこのお洋服は仕立ててみせますので、3日ほど時間を下さい」


「あっそうだ、服の枚数なんだが」


あたしが枚数を頼もうとしたら、シルが提案をしてきた。


「その事ですが、シノブ様は【洗浄】という魔法をご存知ですか?」


あたしは首を横に振り『知らん』と答えた。


「私が見本をみせます。丁度汚れている所がありますのでそこを見ていてください。······【洗浄】」


シルが魔法を使ったことで汚れていた箇所の汚れがなくなりキラキラと光輝いていた。


『【完璧投影】発動、生活魔法【洗浄】を覚えました』


おお!?すげぇ綺麗になったぞ!


てか、ついでに覚えたな。


「これを使えれば、服が1着でも、汚れを気にせずに着ていられます。服を着ている状態で使うことで、身体の汚れや不快感もなくなり、お風呂の後のようになります」


おお!めっちゃ便利じゃん。


「これは生活魔法と言いまして、魔法が使える方なら、覚えられる魔法です。シノブ様は魔法の方はいかがですか?」


「問題ない」


あたしはシルに、生活魔法を教えてもらったことで覚えたことにして、無事に使うことが出きるようになった。


「最後に頼みがあんだけどいいか?」


「はい、なんでしょう?」


あたしは依頼の報酬をまだ貰っていないことをシルに話した。


「そんなわけで、貰えると思ったんだか、当てが外れてさ、金がないんだわ、すまないが、昼飯代貸してくれないか?」


「でしたら、私もまだなのでご一緒してもよろしいですか。美味しいお店をお教えしますよ」


あたしは是が非でもその提案に乗ることにした。

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