あの居酒屋で、また

あちゃん

第1話あなたと出会って人生が色付きました。

ー ニュースです。昨晩○○町で男女がビルから飛び降りて命を絶ちました。

おそらく交際関係があったのではないかと警察も調査を進めています。ー

朝からそんなニュースを見た。

好きな人と心中?笑

バカバカしい。そう思いながら 昨夜飲んだ缶の酒の縁に残った水滴を、ぼんやり眺めていた。

「彩奈ちょっと来てー」

一階から母の声が聞こえてくる。

「はーい」

と気だるそうに返事をし、重たそうに足を引きづって階段をおりた。

「今日高校台風来るから学校休みだって」

そう言われ、また重たそうな足を引きづって部屋に戻ってまた眠りについた。

目が覚めて外を見るともう暗くなっていた。

台風なんて来ていなかった。

暇になった私は、服を着替えて外に出て夜の店が連なる通りを、あてもなく見て歩いた。

しばらく歩くと友達が前におすすめしてくれた居酒屋を見つけた。

私も少し気になっていたので入ってみることにした。

お店に入るとそこは昔ながらのお店っぽくてどこか懐かしい感じがした。

周りにいるお客さんもみんな常連さんばっかりで一人席に座った私は口を動かさず、黙々とメニュー表を眺めていた。

何にしようか迷っていると

隣に居たもう飲み始めて結構経ったのであろう男の子が椅子を私のほうに寄せて

「ここのだし巻きたまご美味しいから食べてみて」

そう言われ、私はだし巻きたまごとレモンサワーを頼んだ。

目の前にあったテレビを眺めながら商品を待ってた。

そしたら隣にいた男の子が再び口を開いて

「ねえ何歳なの?結構若そうだよね」

最初はナンパか?

そう思ったが、私にするはずもない。そう思い

「二十です。何歳なんですか。」

と嘘をついた。

相手は目を丸めて

「若いねー!俺二十三歳!二十って言ったら一番楽しい時期だね。」

ニコッと笑いながらそう言った。

私は、

この人は二十三年間楽しい人生しか歩んでない私とは別の世界の人なんだな、平凡な私とは違う。

そんな事を思っていると、

お店の綺麗なお姉さんがふっくらと膨らんだだし巻きたまごとキンキンに冷えたレモンサワーを持ってきた。

だし巻きたまごを口に入れると、思わず

「おいしい」

と口からこぼれた。

それを聞いた隣の男の子はまたニコッと笑って

「ね!美味しいでしょ?俺の舌に間違いはないからねなんでも聞いて」

そう言われ、純粋にいい人なんだなと思った。

そこから一時間彼と話が盛り上がって

彼の面白い話や美味しいご飯の話をした。


「そういえば名前聞いてませんでしたよね」


「私は彩奈っていいます。''彩る''に''奈良のな''で彩奈。逆にお名前聞いてもいいですか?」


「俺は唯杏っていいます。''唯一無二''の唯に''杏仁豆腐の杏''!」


「なにその言い方笑おもしろい笑」


名前を教え合うだけでこんなに笑ったのはいつぶりだろうか。

そんなことを思いながら口にお酒を運んではお話をするのが続いた。

しばらくすると、

スマホを見ると母からのLINEが来た。

「いつ返ってくるの?もう帰ってきなさい!」

家に帰らないとめんどくさくなりそうなので私はお金を置いて、

「また機会があったらお話しましょうね。

面白い話たくさん聞かせてください」

一礼して店を出た。

家に帰り。真っ直ぐ部屋に戻った私はすぐに

ベットに倒れ込みそのまま寝た。

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