女伯爵アンヌは単身、エルフの国にいた。拐われた執事見習いの少年を取り戻すためだ。しかし、少年はすでにむごい暴行を受けた後であり、アンヌの懇願も足蹴にされる。勝ち誇るエルフ達だったが――彼らはよく知らなかったのだ。殺戮の魔女のことを。
読み始めてすぐに、アンヌの人柄を意外に思いました。タイトルやキャッチから、なんとなく「殺戮によってすべてを問答無用で解決していく物語なのかな?」と想像していたのですが、実際の彼女は賢明な雰囲気で、避けられる争いは避けようと手を尽くしている印象を受けました。
そして、匂わせていたとおり彼女はその規格外の力で周りを圧倒するのですが、それがザマァを通り越して「うわあ……」という感じだったのも衝撃でした。エルフ側に同情するわけではないのですが、「そこまでやらなくても」と思うような容赦のなさでした。
なので、「ここまでやったらこれ以上はないだろう」、「エルフの国はプロローグで、いろんな相手をチートで無双してザマァしていく物語なのかな?」とも想像したのですが、これも違いました。アンヌは徹底的に自分の宣言を遂行していくのです。
彼女が上層部を毎月20人殺した結果、一国はどんな運命を辿るのか。さらに細かく、もし~なら国は、その国民は、周辺諸国はどうなるのか。キャラ個人や政治的な視点、物語をとおしてフィクション世界だけでなく、現実における人間社会の仕組みも垣間見ることができたように思います。
現実でも政治的な駆け引き、あらゆる言葉の解釈はありますし、自分が生まれる前の出来事で怒りを向けられることもあります。自分にとってごく当たり前の日常を過ごしているだけで、直接的ではなくても、見知らぬ誰かを不幸にしていることもあるはずです。
多様な価値観や立場が存在し、絶対的な正しさのない現実を思い、物語の随所で唸らされました。
興味深く、面白かったです!