異世界突撃!

ティラノ伍長

第1話 伍長、異世界に突撃するであります!

夜明け前。

薄暗い森の中を、ひとりの小柄な影が全力で走っていた。


「……状況開始。敵勢力に囲まれている可能性、大であります!」


息は荒くない。

身長150cm、体重80キロのガチムチ体型。

だが童顔で、恐竜モチーフのマスクをつけた“彼”は異様に目立っていた。


その名は ティラノ伍長。

元・自衛官。現・フリーのマスクマンプロレスラー。


ついさっきまで、試合後の帰り道。

エレベーターの“閉じる”ボタンを押した途端、光に飲み込まれ

気づけばこの森のど真ん中に転移していた。


「ここ、どこでありますか……? GPS圏外であります……!」


スマホは「圏外」どころか文字化けしている。

背中のカバンにはスコップとメリケンサック、タオル、栄養バー。試合のために持ってきてたものだけだ。

銃火器はない。

あるのは筋肉と戦闘経験、そしてなぜか身体を包む“魔力のような力”。


胸の中でズキンと熱が走る。

転移の瞬間、誰かの声が聞こえた気がした。


──“その子を守れ。さもなくばそのマスクは二度と外れぬ”


「……その子? マスク?何のことでありますか?」


警戒しつつ周囲を観察していると――


「きゅ……きゅぃ……」


かすかな泣き声。


伍長が振り向くと、

大きな獣に追われて震えている、小さな“何か”がいた。


羽がぴこぴこ動く、小さなグリフォン。

体長30センチほど。

弱々しく、泥だらけで、今にも倒れそうだ。


その後ろには、身長3メートルはある二足歩行のオオカミ男が

ヨダレを垂らして迫っていた。


「……っ! 状況急変! 救護対象を発見したであります!」


迷いはなかった。

ティラノ伍長はスコップを構えると、地面を蹴る。


巨体の狼が咆哮を上げる。


「がるるるるああああ!!」


「……突撃ッ!! でありますッ!!」


鉄の脚力で地面を踏み割り、

伍長は“その体格からはありえない速度”で飛び込んだ。


スコップの横薙ぎ。

メリケンサックのアッパー。

そして仕上げの――


「伍長式ストラングルホールドォォッ!!」


巨体の狼を締め上げ、地面に沈める。


沈黙。

小さなグリフォンは涙を浮かべながら近づき、


「きゅ……?」

と、伍長の足にしがみついた。


次の瞬間――

伍長のマスクが淡く光り、彼の脳裏に言葉が響く。


──“その子こそ、お前の相棒。守り抜け。

   さすればマスクの力は汝を強くし、道を照らすだろう。”


「……ふむ。了解であります」


ティラノ伍長は小さくうなずき、小さな相棒を抱き上げた。


「お前、名前は……ココアであります!」


「きゅいっ!」


こうして。


異世界に突如現れた謎のマスクマン、ティラノ伍長と

ポケットグリフォンのココアの物語が――

ここから始まるのであった。

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