輪廻ー永遠という呪いー

あくうせつだん

第1話「転生」

彼女がいる。

そのことは、俺にとって一番の取り柄であり、生き甲斐だった。



 いわゆる高校デビューに失敗した俺は、友達もろくにおらず、寡黙で、プライドが高く第二志望の学校だったこともあり周りを見下し、行事、グループワークにはろくに参加せず、おまけに若干オタク、トドメの帰宅部、勉強だけは頑張っていたため中間は学年1位だったが煙たがられても仕方のない存在だった。

そんな俺の人生は一言で言うと「無」だった。


だが、彼女がいた。


彼女の名前は、霧島由花。

彼女の存在は、俺の真逆、彼女が太陽なら俺は月それほどまでに真逆で相容れない存在だった。

 学年一の人気者で、頭脳明晰、運動能力、コミュ力共に抜群、後可愛い。

周りは、俺と由花は不釣り合いだと思っているし、俺もそう思っている。


しかし、月と太陽は何故か交わった。

彼女が何故俺のことを好いているのかは、俺自身にも分からないし、俺自身恥ずかしくてそんなこと聞くことも出来ないが、彼女の中には何かがあるのだろう。

彼女は何も無い俺の人生に咲く一輪の花だった。

彼女を失えば俺の人生は再び「無」になるだろう。

しかし、その花は、ある日突然枯れた。


ある日の帰り道


「あのさ、今日この後駅前のハンバーガー屋さんで勉強しない?」


「別にお前学年2位なんだから勉強しなくたっていいだろ。」


「でも、ずっと幸大が1位で私が、2位じゃん今度こそ勝ちたいの!」


小学生の頃から塾に行かされていただけあってか、俺は勉強だけは出来たのだ。

まあ結局その勉強でも第一志望の高校には落ちたのだが。


「別にいいよ。」


特に断る理由もなかったので、二つ返事でokしておいた。


 ハンバーガー屋に着き列に並びながら、今回の期末こそは由花に負けるかもな。

などと、注文の声や、客の雑談の声がうるさくて飛び交う店内で考えていると、


「「キャーーーーーー」」


甲高い叫び声で店内が静まり返り、「ドサッ」という音が静まり返った店内に響いた。俺は、この時嫌な想像が頭をよぎって、一度思考が停止した。

何故ならばその音は明らかに、俺の左隣から聞こえたからである。

一拍開いて隣を見ると背中から血を流しながら、倒れる由花の姿があった。


「オイ、大丈夫か!、死ぬな‼︎」


俺は、何度もその言葉を繰り返しながら泣いていた。

周りの声や音は、俺の耳には一切入ってこなかった。

本当に誰かが刺された時、人はこの言葉が出てくるんだと、これ以外の言葉が見つからないんだと、思わされた。

そして、俺が由花を心の底から愛していたんだと、痛いほどに気付かされた。


 数日後、犯人が捕まった。

しかし、もう俺にはそんなことどうだってよかった。

「どんな事をしても由花は、もう戻って来ない。」

そう思いながら大好きなゲームも漫画も手に付かず。

何に対しても無気力なまま日々を送っていた。


由花の家族は俺のせいではない自分を責めないでと言ってくれたが、その言葉は逆に俺を傷付けた。俺がちゃんと守るべきだったのに、由花お父さん、お母さんの方がもっと悲しいはずなのに、俺なんかの為に慰めの言葉をかけさせてしまっている。

本当に申し訳ないと後悔と自責の念が強くなっていった。


更に不幸だったのは、俺が周りから良く思われていなかった事だ。

これは、元はと言えば俺の責任だが、


「お前が死ねば良かった。」「なんで、お前が守らなかったんだ。」


などと、心無い言葉が俺の心の傷を更に深くした。


そして、俺はやってはならない事をした。

由花の悪口を言った奴を殴ったのだ。


俺の悲しみも知らないで、俺の苦しみも知らないで、俺の怒りも知らないで、俺と由花の事を何も知らないで。


様々な感情が、あの行動に繋がった。

そして、俺は学校を停学になった。

いかなる理由があっても暴力を振るう様な奴を学校には来させられないのだろう。

自分でも馬鹿で自分勝手な行動だったと思っている。

唯一の取り柄だった勉強も、停学によって無意味になった。

こうして俺は、全てを失った。

元々由花を失った時点でもう何もなかったのかもしれない。


飛び降りた。


もう疲れたんだ。

10〜20m位の高さだったと思う。流石に高すぎて一瞬躊躇したが、前にも後ろにも何もないと思い出すと、足が一歩前へ踏み出していた。

今までのことが走馬灯の様に流れて、地面につくまでがすごく長く感じられた。

即死だったと思う、一瞬とんでもなく痛かったが、すぐに意識が飛んだ。

未練はないと思っていたが、やはり家族には申し訳ないと思って手紙を書いた。

今考えても泣きそうなぐらい親には迷惑かけたと思っている。

本当にごめんなさい。

俺にしては、意外にも悪くない人生だったかもしれない。


こうして俺は転生した。










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