第4話 落ち着けぇ!!

私は東乃くぅに半ば強制的にオカルト部なる謎の部活へ入部させられてしまった。

しかも――


「な……なんでお前らまでいるんだよぉぉぉぉお!!!?!」


最悪だ。

東乃くぅ1人だけでも手に余るというのに今日私を苦しめた『美波 うみ』と『北丘 むーこ』まで揃っているではないか。


(くそったれ……! 私の脅威になり得る存在が同じ空間に三人も……!!)


すると、美波うみがこちらに話しかけてきた。


「あの……さっきトイレで……会いましたよね////」


「お、お前……!そ、そういえば何でトイレの用具入れの中で1人縛られてたんだよ!!」


彼女は頬を赤らめながらもじもじと言った。


「……実は私、縄で縛られたりいじめられたりするのがすごく好きなんです……それでむーこちゃんに頼んでトイレに監禁してもらったんですぅ///」


「えぇえぇぇえぇ!!?!?」


(な……なんだその嗜好は……!?地球人はそんなことをして日夜楽しんでいるのか……!?)


私が衝撃を受けていると横から北丘むーこが不敵に微笑む。


「安心して……アナタも、いずれこっち側に堕ちてくる運命だから……♡」


私に電流走る――!


「なっ……!!?!?!」


思わず体が固まってしまったその瞬間、隣にいた東乃くぅが呑気に口を開いた。


「ほんと、うみちゃんとむーちゃんは仲いいよねぇ」


「いや、仲がいいというより……すごく歪な関係だと思うんだが!!?!」


すると東乃くぅは私を完全に無視してホワイトボードの前へと立った。


(くっ……!こいつに無視されるの心底ムカつくんだが……!)


「は〜い、みんな部活始めるよ〜。今日のテーマは幽霊で〜す」


幽霊――そんなもの、あるわけがない。

私は鼻で笑った。


地球人というのは科学的根拠もない存在を信じて怯える実に愚かで未発達な種族だ。

そう思いながら、内心で優越感に浸っていた、その時――


「うううううううううぅぅぅぅぅ!!!!!」


東乃くぅが白目をむきながら全身を震わせ、まるで痙攣するようにその場でのたうち回っている。まるで呪われているかのように。


「なっ……!あ、あんた何してんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?!!!??」


私が叫ぶと、北丘むーこがニヤリと笑った。


「ビックリした?実はくぅちゃんはね、幽霊を自分の体は憑依させることができるのよ」


「はぁ!?そんなわけあるかぁぁ!!」


私が驚きつつもまだ疑っていると――


「うううううぅぅぅ!お姉ちゃんの知り合いの幽霊を憑依させてあげるぅぅぅう!!!!!」


幽霊なんて信じていない。


(だけど……もし本当だとしたら……!)


私の知り合いの幽霊なんて、私に恨みを持ってる奴しかいないじゃないか!


「や、やめろ!!落ち着けぇぇぇぇぇ!!」


私が叫んだ時にはもう遅かった。

東乃くぅの目は完全に虚になり私をギロッと睨みつけてきている。


「うぅ……レイラなのかぁ………!?」


さっきまでの東乃くぅの声とはまるで違う。

低く、恐ろしく、恨みのこもった声――。


「なっ……!!まさか本当に……!?」


「よくもあの時は私を殺してくれたな……!仲間だと思っていたのに……!!」


ゾクリと背中が冷たくなる。

私は脳をフル回転させた。


私が……かつて殺した仲間……?

あっ――!


***


あれは、惑星『サーバ』での死闘――。

私は瀕死で動けなくなった仲間を見下ろし、迷いなく言い放った。


「動けない戦士など、必要ない!」


次の瞬間、私はそいつを空へ放り投げエネルギー弾で撃ち抜いた。

容赦も、情けもなく。


***


「ま、待て!!落ち着け!!あの時は私が悪かった!頼むから許してくれぇ!!」


「許すものか……!今ここで無念を晴らしてやる!!!」


次の瞬間、東乃くぅ(憑依ver.)が私に飛びかかってきた。


「うわぁーーん!ごめんなさぃぃいい!!」


すると、私を遮るように何かがパッと飛び込んできた。

目の前では美波 うみがまるで私を庇うかのように立ちはだかっている。


「や、やめてくださいぃ!いじめるなら私をいじめてくださぃぃいぃぃいぃ///////」


止めに入ってくれた……のか?

彼女は殴られながら何故か恍惚とした表情を浮かべている。


(と……とにかく助かった……!)


そして私が泣きべそをかいていると横で北丘むーこがニヤニヤと笑いながら


「やっぱり……アナタ、素質あるわね……♡」


(素質……!?何を企んでいるのだこの女は………!!!)


私は涙と汗と恐怖と意味不明な羞恥心がごちゃ混ぜになって錯乱していた。


「ちょ、ちょっと待て!私は別にそんな趣味ないからな!?地球人の文化に合わせようなんて一ミリも思ってないからな!!」


そう叫ぶ私の目の前で――


東乃くぅは白目むいたまま低い声で怨念吐きながら美波うみを殴り続けている。

むーこはその様子をニヤニヤ見て楽しんでいる。


(なんなんだこのコイツらは!?恐怖、変態、怨念のオールスターじゃないか!!!!)


私はじりじりと後退し壁に背中をピタァァァッとつける。


「む、無理だ……地球侵略どころか……私の精神がコイツらに侵略されるぅぅぅぅぅ!!!」


そう叫んだ瞬間――


ピピピピピピピ――!


◆脅威度:900000


ボンッ!!!


残っていた予備のスコウターまで爆発して壊れてたしまった。


そして私は悟った。

今日、戦闘力が自分より圧倒的に低い存在に――人生で初めて敗北したのだ。

その決定的な挫折に、私は心の底から震え上がった。


(うぅ……早く母星に帰りたいよぉ………)



――つづく



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〜地球を侵略しに来たエリート戦士の私がなぜか『戦闘力たった5』のJKに苦戦してる件について〜 鮫島 鱗 @sharkspeare

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