〜地球を侵略しに来たエリート戦士の私がなぜか『戦闘力たった5』のJKに苦戦してる件について〜
鮫島 鱗
第1話 戦闘力たった5のJK
「フン……ここが地球か。まあまあの星じゃないの」
そうカッコつけたものの私は満身創痍だった。
地球を侵略する為に遠い星から遥々やって来たのだが何故かUFOのアンテナが狂ってしまいよりによってこの奇妙な砂場へと不時着してしまったのだ。
「くそったれ……なんでこんな事に……!」
土埃まみれで立ち上がろうとしたその時。
「お姉ちゃんなにしてんのぉ?」
横から不意に声が飛んでくる。
よれよれのセーラー服を着た女子高生がアホ毛をぴょこぴょこと揺らしながら怪訝そうにこちらを覗き込んでいた。
(み、みつかってしまったあああ!!)
***
──時は遡ること一年前。
私の父は宇宙最強にして最大の帝国『ウォーグレイス帝国』を統べる帝王。
ある日、玉座の間に呼び出された私は告げられる。
「レイラよ……お前は強い。だが、相手の言い分を聞かずに力だけで解決しようとするその傲慢さはどうかと思うぞ」
「フン!私より弱い父上に説教なんかされたくないわね!!」
いつものように強気に返す私へ父上は落ち着き払って言う。
「戦闘力だけではなく“対話の力”で異星を征服できる者こそ、この星の後継者に相応しいとワシは思うのだ」
「はぁ?なによそれ!」
私は腹が立って咄嗟に言い返す。
「……ま、まさか私にはできないって言いたいの!?分かったわよ!やればいいんでしょ!やれば!!」
私のプライドの高さがつい悪い方に働いてしまった。
「ではレイラよ。地球という辺境の星を侵略してみせろ」
「地球?そんな雑魚しかいない星になんで私が?」
すると父上は静かに立ち上がり、真剣なまなざしで私を見つめてきた。
「よいか──その強大な戦闘力を封じ、“対話”だけであえて地球という弱小民族の星を征服するのだ」
***
──というわけだ。
(一年かけて母星からわざわざこんな辺境の星にまでやってきたってのに……最悪の滑り出しだ)
そんな私の苦労など露知らず、女子高生はボロボロの私をチラっと見ただけで謎の踊りを見せ始めた。
「ユンユンユンユンユン……!」
「な、なにしてんのアンタ……?」
女子高生は真顔で踊りながら言った。
「あたし、宇宙人に会いたいの。だからこうしてUFOがこの運動場に落ちてくるように毎晩電波を送信してるんだぁ」
いや──
「お 前 の せ い だ っ た ん か い!!!!!!!!!」
声が裏返るほど叫んだが彼女は意に介さず続ける。
「ユンユンユンユンユン……!」
(ま、まあいい……!このバカ何故か私が宇宙人だと気づいてないみたいだし……!)
すると女子高生は、不思議そうに私をまじまじと見つめ──
「ところでさぁ、お姉ちゃん宇宙人なの?」
(いや普通にバレとるううううううううう!!)
くそっ!私としたことが……油断してしまった。このまま宇宙人だとバレたら“対話の力だけで地球を征服する計画”がパァだ!
「そ、そんなことないわよ!」
「へ〜、でもUFO落ちてるし、そこから出てきたじゃん?」
私は必死に言い訳をひねり出す。
「ゆ、UFOなわけないじゃない!あれは……あ、新しく発売された車よ!」
「そうなんだぁ、まあいいや〜。あたし『東乃 くぅ』って言うんだぁ。お姉ちゃんはぁ?」
(コイツがバカで助かった……!余計な詮索はやめてくれよホントに……!)
私は素早く『スコウター』を取り出した。
最新のAI搭載をしており相手の情報から戦闘力まで全部わかる宇宙最高のデバイス。
まずは私自身のスペックを読者の貴様らに教えてやろう。
ピッ!
◆私のプロフィール
名前:サイ=レイラ・ウォーグレイス
性別:女
年齢:186歳(見た目は17歳)
身長:164cm
体重:52kg
戦闘力:120000
血液型:A型
外見:
・赤いミディアムヘア
・キリッとした目の美少女
・ボロボロの戦闘服
どうだ? 地球人たち。
これが全宇宙を恐怖のどん底に落とした最強クラスのスペックだ。
(ふふん……)
そしてこのスコウターには、異星で活動するための偽名生成機能も搭載されている。
さっそく地球での名前を決めてもらうとしよう。
ピッ!
◆地球名:西 レイラ
(……な、なんか普通……けど今は仕方ない!!)
私は精一杯の笑顔を作って答える。
「わ、私は西 レイラっていうのよ」
するとくぅはにっこりして一言。
「へぇ〜、変な名前だねぇ」
(いや『くぅ』のアンタに言われたくねぇんだけどお!?)
私は少しイラッとしつつも冷静さを取り戻す。
「まあいい、コイツのスペックも見てやるか」
ピッ!
◆東乃 くぅのプロフィール
名前:東乃 くぅ
性別:女
年齢:17歳
身長:159cm
体重:45kg
戦闘力:5
血液型:B型
外見:
・緑色のツインテール
・よれよれのセーラー服
・マヌケ面
(フン……戦闘力たったの5か……ゴミめ)
私は鼻で笑った──その瞬間。
「な、なんだ!?スコウターの様子がおかしいぞ!?」
ピピピピピピピ!!!!
◆脅威度:100
「なっ……脅威度!?」
最近のアプデで追加された謎の数値が勢いよく跳ね上がる。
◆脅威度:1000…1100…1300…2000…6000 …18000……63000…………530000!!?!
「や、やばい!とまれぇぇえ!!落ち着けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
ボンッッッッ!!!!!!!!!!
私のスコウターは勢いよく爆発四散した。
「どしたのお姉ちゃん?なんか変なメガネ壊れちゃったねぇ」
(……こいつ……絶対ヤバいやつだ……!!)
──つづく
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