たまたま近くへ来た男の娘

 高校2年生、17歳にして、すでに数百冊の本を読んできたという読書家で、特に高校に上がってからは、文学に目覚めた…か。


 しかし、そんな所謂『文豪』たちに混じって、私の作品をも読んでくれているとは…うん、なかなかいいセンスしてるわい、ヒミコちゃんは。


 まあ、そうだな。今どき珍しい(?)文学少女(少年?)ってやつだな。


 しかも…


「しかも『叔父様』ってか…」

 

 ダハハ、そうなの。ヒミコちゃんと来た日には、私のことをそう呼んでくださったのです。この前、ここへ来た時に。


「椚の叔父様っ…」


「そうそう、そんな感じで…」


 …って誰やッ? そう思って(冷房が苦手ゆえ窓開けっ放し)例の8畳間から四つん這いで顔出せば、初登場の時と同じ位置。この庭の向こうに、なんとそのヒミコちゃんが佇んでいるではありませんかっ。


「こ、こんにちは、叔父様」


 あれから5日後の日曜日の午後。相変わらずの美少女…もとい、美『男の娘』が、網に入った小玉スイカなんぞを手に、やっぱりはにかみつつ、静々とこっちへ歩み寄ってくる。なぜかネコ耳メイド服姿でぎゃふん


「いやま、メイは? もしかしてヒミコちゃん、ひとりで来たのかい」


 四つん這いのまま縁側へ。そこへ来て私は、正座でもって彼女(彼?)をお出迎え。


「はい、たまたま近くへ来たもので…で、先日のお礼をと思いまして…これどうぞ」


「それで、わざわざ?」


 ネコ耳メイド服姿で、たまたま近くへ来るというのも妙だが、とにかく私は、ヒミコちゃんからスイカを受け取った。


「ま、とにかく上がって上がって。きょうも暑いし、なにか冷たいものでも飲んでいきなさい」


「は、はいっ、ありがとうございます」


 ニコッ…って、かわええ~ッ(東京ドーム約千個分の破壊力!)。

 

 本当に男の娘かいな〜ッ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る