忘れられた教室

@oroden

プロローグ:忘れ物の教室

放課後の教室は、夜の気配を含んで静まり返っていた。

蛍光灯の白い光だけが机の列を照らし、外では風が校舎の隙間を抜けていく。


相田ユウ(17)は、自分の机の上に置かれたプリントに目を落とした。


——「協調週間」の実施。


毎年、ひとりが矯正対象にされる行事だ。

今年、その対象が自分であることは、もう理解していた。


ユウはふと教室の隅を見る。

古い通知表が貼られている。


——志藤ミオ

——出席:全て「欠席」


このクラスにそんな名前の生徒はいなかったはずだ。

だが、その名前を見ると胸がざわつく。


夜、自宅で通知が届く。


差出人:志藤ミオ


「ユウくん。あなたも消される。私のように。」


メッセージは一瞬で消えた。

スマホに残ったのは“受信したという痕跡”だけ。


階段から足音が近づき、

部屋の前で止まる。


少女の声がした。


「……ユウくん。どうして私のこと、忘れちゃったの……?」

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