案山子
しとえ
案山子
車から黒い煙が吹き出し、エンジンがストップした。
クソ!クソクソ!
何度もアクセルを踏むが何の反応もない。
俺はトランクを開けた。
中にはバラバラに刻んだ死体。
口論になってカッしてしまい気がつけばこの有様だ。
適当な雑木林の中まで遺体を運ぶと持ってきたスコップで穴を掘る。
血と泥まみれになりながらなんとか埋め終わる。
…これからどうするか。
携帯の電波は届かないようだ。
最もカーサービスなど呼ぼうものなら足がついてしまうだろうから結局のところ車を捨てて自力で帰るしかなさそうだ。
…バス停まで歩くか。
道なりに随分と歩いたが一向にバス停に着く気配はない。
空はクリムゾンの禍々しい色をしていた。
民家が見えるので今夜はここで泊まることにする。
そういえばこの辺りは廃村だった。
民家に入ろうとして人影のようなものが見えた。
ぎくりとするがよく見ればそれは案山子だ。
村起こしで案山子祭をやっていたという話を聞いた。
カビが生え黒ずんで気味が悪いことこの上ない。
…いや、所詮ただの案山子だ。
夜、廃屋の中で一人寝ていると『ごとり』と音がした。
慌てて振り向くと案山子が立っている。
なんだか案山子か…
…いや、待てなぜ案山子がこんな所にある?
おかしい!おかしい動くはずがない!
俺は逃げようと走り出した。その途端ドンと何かにぶつかる。
案山子だ!
案山子に囲まれている!
布の間から殺したあいつの顔が見える!
助けてくれ!
…誰か!
…ねえ知ってる?
廃村に案山子の村があって、捕まったら案山子にされちゃうんだって。
案山子 しとえ @sitoe
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます