第16話 結人先輩と合流!
ハイドラを討伐し、ダンジョンを楽しみ、夜の宴を楽しんだ翌日。ハワイでの観光が始まる。結人と一緒に遊べる。
「先にカメハメハ、見ようぜ! てか、そこで待ち合わせしようぜ!」
宗近のリクエストでカメハメハ大王像を見ることになった。いくつもあるとネットで書かれていたので、ついでに観光スポットが見られるホノルルに決定した。最寄りのバス停から十分程度歩く。
「はいっ! チーズ!」
辿り着いて数秒も経たない内にカメハメハ大王像との記念撮影が始まった。地元民らしい女性が撮ってくれているので、あっさりと終わる。
「センキューセンキュー!」
宗近が現地民の女性とハイタッチをしている。恐ろしいコミュニケーションスキルを見た気がした。
「藤堂、先輩から連絡来たか」
さっきまでノリノリだった越田が静かになっていた。昔みたいに結人と呼びたいが、バレて大騒ぎになりかねない。だから、俺達は先輩とぼかすしかない。
「来たぜ。バス乗ったって」
チャットでのやり取りの画面を見せた。別の最寄りのバス停から数分以上も歩くらしい。バスに乗ったばかりなので、時間がかかりそうだ。
「周りブラブラしちゃう?」
宗近が背中にのしかかってきた。普通に重い。膝が曲がってしまう。身体に力が入っているからか、声が震える。
「その方がいいな。てか。重い」
素直に従ってどいてくれたので、すぐに軽くなった。ちょっとだけ背伸びをしながら、三人と話そうと足を動かし始める。
「宗近。どうした」
越田が突然静かになった宗近に話しかける。いつもの明るいお調子者の雰囲気ではない。顔もどこか真剣だ。
「変だ。なんかあった」
俺も、越田も、神沢も傾げてしまう。どういうことだと。経験上、宗近は嘘を言っていないことが分かっている。それしか判明していない。
「宗近、具体的に言え」
冷や汗をかきながらも出た俺の質問に、宗近は静かに答える。
「ちょっと先でパニック状態になってるかも。微かに銃撃戦が聞こえるし」
あいつはチームTOMKの中でも五感が優れている。方向すら分かっている程の精度を持っている。ふと宗近と目が合う。
「藤堂。どうする。俺らは探索者だけど、対人戦のプロじゃないぜ」
その言葉が胸に突き刺さる。確かに俺達は一般人よりも強い。ただし、それは対魔物戦であって、対人戦ではない。そして、ここは日本の外で、安全という保障がない。
「ぱっと見は……問題ないな?」
周辺を探ってみるが、誰もがいつも通りに歩いている。念のため、宗近を窺ってみたが、特に問題なさそうだ。
「ここはまだ安全だ。情報収集を先にしておこう」
三人に伝えてから、スマホで何があったのかを調べ始める。ハワイ。オアフ島ホノルル。この二つをキーワードにして、虚実入り混じるSNSで検索をする。
「お姉さん、なんかあった?」
途中で宗近が金髪のランナー女性に聞き込み調査を開始していた。勝手な行動で注意をしたい。しかし、現地の人からの情報が正しい可能性が高い。我慢するしかない。
「あら坊や。バスジャックが起きたの」
彼女の口から出た言葉はとても物騒なものだった。だからこそ、宗近が感じ取った何かの原因かもしれないと納得した。
「黒ずくめの男が数人、乗っ取りしたそうよ。運転手を銃で脅して、指示を出して、指定された場所まで誘導しているの。目的は……分からないわね」
偶然見かけたとは思えない程の詳しさだ。襟首を掴んで宗近を下がらせ、俺が表に出るしかない。
「ぐえ」
変な声が出ているが、気にしている余裕はない。警戒をしながら、俺は彼女に訊ねる。
「何故そこまで知ってるんですか」
「だってこの目で見たもの。ランニングしてる途中であの距離だから朧気だけどね」
茶目っ気たっぷりに、女性はウインクを飛ばしていた。蛍光色のランニングシューズ。スポーツドリンク。首筋に流れる汗。無駄な筋肉や脂肪のない身体。間違いなく、ランナーそのものだろう。
「ちょいとヤバめだったから、いつものコースと違うところに避難したってわけ。因みに」
彼女の顔が近い。思わず後ろに下がってしまう。力強い目というより、ワザと強調させている?
「マサイ族にも負けないこの目があるからこそよ! Bye!」
颯爽と女性が去った。風のような女性だなと思いながら、ポカンとした三人を蹴る。
「お前らも見惚れてないで整合性チェックしろ」
ため息を吐きながら、俺はネットで情報を集める。流石にネット記事はない。SNSで探るしかなかった。カーチェイスの途中で、銃撃戦が勃発し、重傷者が続出したと書かれている。山沿いの道路で走るバスがジャックされたらしい。というか俺達がいるところより北で銃撃戦があったという。危なかった。
「先輩が乗ってなきゃいいんだけどな」
結人がどのバスに乗っているかまで、俺達は把握していない。乗っていないことを祈るしかない。
「なあなあ。バスが高速道路に入ったって。目的なんだろうな?」
宗近の素直な疑問に首を傾げるしかない。他に何かないだろうかと探ってみるも、大した情報が入って来ない。画面と睨めっこをしていたら、先輩から連絡が来た。すぐそちらを見る。
「例のバスジャックで中止になっちゃったから、タクシーで来ることにするよ」
巻き込まれていない。それを知って、俺達はホッとした。そして、数分ぐらい待ったら、結人が駆け付けていた。
「ごめん。ちょっと遅れちゃった」
相変わらずフードを被っている。首元にはアメジストのネックレスが光っている。ショルダーバッグと日焼け防止のスパッツとランニングシューズで、活発そうな若い男にしか見えない。傷や血らしきものはない。本当に無事のようだ。
「いえ。大丈夫です」
そう言いながら、俺達の遠いところで事件が動いているのだと改めて実感する。ちょっとした喧騒があれど、既にいつものハワイの光景に戻っている。
「遊びましょう。先輩」
これから俺達は遊ぼうと思っている。観光スポットを巡って、動物と触れ合って、美味しい物を食べて、思い出作りをしよう。
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