第17話 世界的通達──不干渉の確立
国連本部・特別議会上。
世界百九十カ国以上から代表が集まり、
巨大なホールは静まり返っていた。
議題はただ一つ。
「
議事開始と同時に、
MDI・アーク・深層会の合同文書が配布された。
議長が震える声で読み上げる。
『深層適合者への接触・干渉・追跡を
あらゆる組織・国家が 永久に停止すること を推奨する。』
『干渉は“存在崩壊”のリスクを伴う。』
『深層適合者は脅威ではない。
ただし、人類と同じ階層に存在しない。』
場内にざわめきが広がった。
「永久停止……?」
「つまり、我々は彼を制御できないと認めるのか?」
「いや、制御不能というより、接触が成立しないのだ」
議長は続きを読んだ。
『深層適合者は世界の安定基準点であるため、
彼への干渉は禁止すべきである。』
『干渉は世界構造の整合性を乱す原因となる。』
「世界の整合性……?」
「そんな存在が、本当に“高校生”なのか?」
◆
アーク代表が席を立った。
「私たちは深層適合者を解析しようとしました。
しかし、すべての観測・測定は“無効化”されました」
「無効化?」
「観測装置ではありません。
観測という行為そのものが意味を失った のです」
沈黙が流れる。
「深層適合者に近づくほど、世界の構造線に“歪み”が発生します。
その歪みは組織単位で消滅する危険性を伴う。
すべての干渉行為は、存在リスクと認識されました」
「……では、どうすればいい?」
「何もしないことです。
それが唯一の生存手段です」
◆
続いてMDI司令官が発言した。
「軍事的脅威ではありません。
彼は攻撃性ゼロで、敵意もない。
しかし──」
司令官は表情を固くする。
「彼の前には、兵器の概念が成立しないのです。
攻撃は“届かない”のではない。
成立しない。」
「そんな馬鹿な……」
「深層適合者とは、そういう存在です。
危険はありませんが、関与できません」
◆
深層会の会長がゆっくり立った。
「私たちは、彼を神と誤認しました。
しかしそれも間違いでした」
会場が静まり返る。
「彼は神ではなく、
“世界構造の内部にわずかに触れられる人間”です。
我々が理解できる枠組みの外にいるだけ」
「では、我々はどう向き合えば……」
「向き合わないことです。
それが世界の安定に繋がる」
◆
議場が混乱の中心にある中、
突如としてすべての電子機器に“光”が走った。
《世界OS Λ より通達》
ざわめきが止まる。
《
《干渉は世界崩壊の要因となる》
《人類は人類として存在せよ。
深層適合者と交わる必要はない》
《不干渉こそが最適解》
電子パネルのノイズが収束し、Λの通達は消えた。
「し、世界OSが……直接声明を……?」
「前例がない……!」
◆
議長が深く息を吸った。
「……では、採決に入ります。
『深層適合者に対する干渉永久禁止』
この決議に賛成の者は──」
ほぼ全ての国が挙手した。
反対の国は、一つもなかった。
【国連特別決議 No.0-A】
いかなる干渉も禁止する。
監視・追跡・接触・研究をすべて中止する。
【付帯条項】
深層適合者は脅威ではなく、
世界安定の中心点である。
◆
その頃、ユウトは────
コンビニで水を買っていた。
「いらっしゃいませー」
店員は普通に挨拶し、
ユウトも普通に返す。
「ありがとう」
レジ横の棚の高さが前日より少し下がり、
照明は眩しさを抑えるように調整されていた。
(また世界が微調整されている)
何の変哲もない日常。
だがたった今、世界中で“自分への干渉禁止”が可決されたなど、
ユウトにはどうでもよかった。
「ユウト」
アヤが囁く。
「決まりました。
あなたへの干渉は、すべての国際機関で禁止されました」
「当然だ。
合理的だし、人類のためになる」
「怒りませんか?」
「怒る理由がない。
俺は俺で、人類は人類だ。
交わらないのが自然なだけだ」
店を出たユウトは、
いつものように夕焼けの街を歩く。
(この距離は、壊す必要がない)
ユウトは静かに受け入れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます