鬼といぬっころ

永寝 風川

鬼といぬっころ

私、山針 金戸はりやま かねとは出勤中だ。と言っても家から会社までとても近くて徒歩で移動しているが、今の季節はめちゃさみぃ。しかも、今日は特に空気は冷たく、マフラーを巻いてないと寒くて仕方ねぇ。角先もつめてぇからカバー的なのが欲しくなる....まぁ、ダサいしいらねぇかな....でもほしい。


しかし、ポケットに忍ばせているカイ本当に本当にないと今の冬は厳しい。周りを見ると、獣のやつらは薄着でいいなと思う。まっ、知り合いいわく、夏は辛いらしい。一長一短ってやつだな。


さて突然だが、私はいまとても悩んでる事がある。それは、家に住み着いているいぬっころだ。今日は12月25日。いわゆるクリスマスっうものだ、そのためか、学生ぐらいの年頃の男女が朝からいちゃついてやがる。

話がそれたな、私は楽観的な考えで、いぬっころにやるプレゼントをクリスマス当日までにゃ決まるだろうと思ってたが、実際は当日のなっても決まってなかった。


はぁっとため息まじりに、息を吐くと白い空気が口から出る。それを見てるとさらにため息が出ちまう。それぐらい悩んでいた、いぬっころは何あげても喜ぶ奴だが、せっかくのクリスマス。特別なものがあげたいと思ってしまうのが当然だとは思わねえか?



「....はぁ」


「ため息なんて、あなたらしくないですね」


「あ、ラクネ」


急に横から声を掛けられそっちを見るとラクネがいた。

ラクネは私の同僚だ。種族はアラクネというやつだ。あれだな、マーメイドやケンタウロスの蜘蛛バージョンだな。というか紫色の肌にジト目、しかも眼鏡かけてるんだよなこいつ。片目隠してるし、胸でけぇし。


「一体何人の男性が性癖破壊されたんだ?」


「何言ってるんですか貴方は....ところで、ずいぶん考え事をしていましたが、どうしたんですか?貴方らしくない」


「プレゼントだよ、いぬっころの」


「あぁ、彼女さんの?」


「いぬっころは居候だ」


いぬっころは居候の黒い犬の雌獣人だ。いわゆる幼馴染って感じなんだが中学を卒業して以降、急に顔出してきたと思ったら、そのまま荷物を持ってきて暮らし始めた変な奴だ。


「1年前からずっと一緒って恋人のようなもでしょうに....というかプレゼントですか...まぁ、貴方が悩む理由として納得しました」


「なんでだよ?」


「それくらいしか悩まそうなので」


それだと私が馬鹿みたいに聞こえるじゃねえか!


「喧嘩なら買うぞ??あまり鬼の力舐めるなよ?」


「ご遠慮しておきます」


そんな会話をしながら、社員証を機械に差し込み社内に入る。


「今日、仕事は少ないでしょうし。相談に乗ってもいいですよ」


「あんがと」


にしても、仕事しながらなら私語で話してもいいとかここの会社かなりホワイトだよな。改めてそう思っちまう。エレベーターで二階に着いてタイムカードを押して仕事場に入り、自分のデスクに座る。


「にしてもよ、いつも思ってんだが。ラクネ椅子ねえけど辛くねえの?」


「辛くないですよ、というか座るのとあまり変わらないんですよね」


「んぁ?そうなのか?」


「ずっとではないですけど、ほとんどこの体制ですし」


「あー」


「悩みとしては、背が低いことですかbね」


「....ちb」


言い終わる前に、ラクネの鋭い爪先が手首に当たった。死ぬかと思った。二度と言わないと誓う。

だからその笑顔やめて、怖い。


「....」


「すいません。二度と言いません。なので黙って笑顔にならないでください。」


「許しましょう」


ほっと息をなでおろし、昨日途中で切り上げた作業を再開する。まあ、頭ン中はいぬっころに渡すプレゼントのことでいっぱいだが。

アイツ何ほしいんだ?肉とか食べ物系じゃないことは確かだ、聞いた時。「それは一緒に食べるからいい」と言ってたし。アクセサリーもつけるタイプじゃねっぇし。いや、舌ピアスにスプリットタンとかいう。性癖ぶち壊しの舌だったな。うぅむ....


「ラクネ」


「何でしょうか」


「食べ物もアクセサリーもいらないと思った場合、何渡せばいいんだ?思い出か?」


「惚気ないでください、その角へし折りますよ」


「それやったら大犯罪だぞ...鬼の角は繊細なんだ、制御機関なんだ」


「しってますよ」


...話がそれてる、不味い。


「まぁ、思い出という名のデートでもしてきては?」


「なぜデートになる、私もいぬっころも女だぞ」


「同性愛なんて今どきふつうですよ」


そうか、数か月前に同性愛の結婚が許されてたな。

いや、するつもりなんか、一ミリもねぇからな!?いぬっころは幼馴染で居候なだけだ!!少なくとも、私の中ではそうだ。....まぁ、離れたら寂しいが。


「手、止まってますよ」


ラクネがそう指摘して、自分の手を見ると確かに止まっていた。だめだなこりゃ。


「あ?あ。すまねえ」


軽く謝り、再びキーボードをたたき、書類を進める。サボり判定だけはごめんだ、居心地がいいからなここは。


「金戸はめんどくさい性格ですからね」


「そうか?」


「そうですよ、ツンデレであり、真面目さとめんどくさがりが両立してて」


「誰がツンデレだよ....あと、なんでわかるんだよ」


「顔に出やすいので」


嘘だろ?急にそう言われたら恥ずかしくなるぞ!?ま、まぁ落ち着け、仕事進めて落ち着け。あの時無意識に自分がこんな顔してたんだなとか考えるな!!


「金戸は赤鬼なのに、顔が赤くなってるなって分かりやすいです」


「見んな!」


やばっと思い周りを見るが他社員が気にしてないようでほっとする。いやよくねえ、オイこらラクネ!ニヤニヤすんな!!もういい...もういいもん!!気にせずに、昼休憩になるまで仕事に集中してやらぁ!!


「頬を膨らませて....ふふ」


笑うな!


あれから息切れするのほど仕事に集中して昼休憩、いぬっころが作った弁当を噛みしめながら、再びプレゼントのことを考える。


「思いつかねぇ....」


「お疲れ様です」


隣からラクネがニコニコと笑顔を向けてくる。やべぇ、殴りてぇ。久々に切れちまったよ。行こうぜ?屋上によぉ?まっ、そんなことしたらクビになるから、頭ン中だけで許してやる。というかプレゼントのこと全然決まらねぇ!!


もうダメかもしれねぇ。ごくっと口に含んでいた物を飲み込み、ラクネの方を見る。


「お前は、いぬっころになにわたしゃいいと思う?」


「実際にあったことがないのでわかりませんが、ペアルックとかじゃないでしょうか?幼馴染なのですから、自分が身に着けてるものと同じものを渡せばいいかと」


なるほどな、と思う。でもアクセサリーはアイツあまり身に着けねぇんだよな。キーホルダーでも渡すか?いや、流石にないか。


「うーん...」


「悩んでますねぇ?」


「そりゃ悩むに決まってんだろ。幼馴染で大切な奴にわたすプレゼントだからな」


「いいですね、恋人がいて」


「だからちげぇよ!?」


「そろそろ自覚してくださいよ....じれったい話ばかり聞かされる私の身にもなってください」


「そんな話してねぇだろ?!」


してないよな?あーまぁずい、また恥ずかしくなってきた。流石に耐性がなさすぎねぇか?私。


「鈍感系主人公ですねぇ....」


「だぁぁぁぁあ!!!!」


「ハイハイ、顔真っ赤にして叫ばないでください」


もういい....私お仕事頑張って帰り道に見かけた良さげなもの買っていぬっころに甘える。


時間が立ちようやく、退勤時間だ。今日は明日に持ち越す仕事がないから、どこか心が軽い。バッグをからって、マフラーを首に巻いく。そして、となりのデスクで、残業確定して少し泣いてるラクネを見る。


「んじゃ、私先帰るな!」


「からかったの謝りますから、た、助けて。くれませんか??」


とびっきりの笑顔を向けて「断る」と言いはなつ。その瞬間、ラクネは頭を机にのっけたが、私は知らない。さっさとタイムカードを押して会社から出る。



「うぉ、さむぃ。ん?雪?」


身を震わせ、夜空を見ると雪が降り始めてきた。ホワイトクリスマスという奴だろう。まぁ、かなりあいまいな知識だけど。

というか寒い!!カイロがないと死ぬ!!


そそくさと夜道を歩く、周りに見えるのはキャッキャッしてる子供連れの親子やカップル。いぬっころ、今日一緒に出掛けれなかったとか言って噛み付かねぇよな??


ま、まぁいいや。あ、そうだ。すっかりクリスマスケーキのことを忘れていた。確か、もうちょい先にケーキ屋が。


「あった...けど売り切れか?まいったなぁ」


ケーキ屋前で店頭販売されていたが、机の上には何もなかった。少しの間、どうしょうかと、考えながら立ち止まっていると。その様子を見ていた、サンタのコスプレをした中学生ぐらいの褐色肌の竜人が声をかけてきた。


「ケーキをお求めかい?」


声があれだ、姉御キャラだ。口調も姉御キャラだ。なんだ?この街にいるすべての女性は性癖ブレイカーなのか?


「あ、そうなんですが。やっぱり売り切れちゃいました?」


「いんや?旦那様が店頭販売は寒いから途中でやめたのさ。いま片づけてる最中だよ」


え?旦那様?この竜人結婚してらっしゃる????あ、指輪つけてる。マジか。


「な、なるほど。それじゃ、オススメを聞いても?」


「たっぷりクリームイチゴケーキ、パキパキチョコを乗せて」


「シンプルイズベストってやつですね。ならそれにしてみます」


「あいよ。金の準備しといて。いまもってきてやっから」


「あ、はい」


ケーキを購入して歩き出す。

けど、プレゼントが決まらねぇ。


「ん?」


足を止めて、レストランの中を見ると。人間が獣人の女の子に首輪付けていた。


「ま、まじかよ....」


獣人に首輪をつける。それは結婚指輪的な意味合いもあるが「二度と話さない」という、意味も持つ。しかもあれだ、神に誓う感じだから、離婚なんかしようもんなら、地獄をみる。

まぁ、それぐらいの覚悟があるっうことなんだろうな。


「.....」


再び歩く。帰宅道とは違う道。無意識に。少し歩くとジュエリーショップの目の前に着く。


「い、いや。さ、さすがに...」


顔を真っ赤にする。いや、わかってたんだ。いぬっころが好きなのは。ただ勇気がないだけで....ええいままよ!!


私は鬼だ!!うじうじせずに中にはいる!


ぴっちりと黒いスーツに身を包んだ、ゴブリンの男性がやってくる。ゴブリンは金属や宝石が好きだ。だから偽物とかは絶対わかるし、偽物も売りつけないことで有名だ。


「宝石のついた首輪はないか?。あと、チョーカーもだ」


ゴブリンの定員は、何も言わず案内してくれる。顔に出てるんだろうが気にしねぇ!

いぬっころは赤が好きだ。だから私は迷わず、白の首輪にルビーがはめ込まれているものと。黒のチョーカーにルビーがはめ込まれてるものを選ぶ。


金額はみたくねぇ。だから、会計の時目を瞑ってカードを通した。

というか記憶がねぇ、気づいたら家の前に立っていて、プレゼントが入った高級そうな袋と。ケーキの入った箱を見比べてため息を吐く。


「何やってんだよぉ.....」


受け取ってもらえるかはわからねぇ。不安でいっぱいになる。”もしも”が脳に広がる。

だが、後悔はねぇ。あたてっ砕けろだ!!


カギを差し込み、玄関を開け中にはいる。いぬっころが作ってくれた、料理のいい匂いがしたが、それより、顔が熱い方がきになる。

どたどたと足音をたてて、リビングからしょっこりと顔を出す。黒いもふもふの毛並みに、人見知りで目が見えないほど伸ばした顔。いぬっころことベロス・ヘルゲだ。


「ケーキ買ってきたぞ」


靴を脱ぎ、家の中にはいりリビングに向かうと。なんか座り込んで私を見上げていた。


「....ねぇ、はっちゃん。かってきたん...だよね?」


顔を真っ赤にさせて俯くいぬっころ。匂いか、もしくは女の感という奴なのか?まぁ...いい。心臓がうるせぇ。ケーキの入った箱や荷物をひとまずおいて。再びいぬっころの前に立つ。

そして顔に手を当てて、いぬっころの目を見えるようにする。ナイフのように鋭い目つき。そして、煉獄のように赤い瞳。それはしっかりと、私を見てくれていた。


「....」


何も言わず手を放して、袋に手を突っ込み。例の白い首輪をつけてやる。そして、いぬっころの手に黒いチョーカーを渡して。ゆっくりと口を開く。


「次はいぬっころがつけてくれ。あと、じろじろ私の顔を見るんじゃねぇ....恥ずかしいんだぜ...こっちも」


いぬっころはくすりとほほ笑んで、立つと私の後ろに回り込み、チョーカーを付けてくれる。


「あー...なんだ...ず、ずっとそばにいるからないぬっころ」


「うん、そばにいてね。はっちゃん」

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