その足で
阿呆毛
第0話 『崩壊』
「----メリカ---ゼルスにて-------デミックを----ました。避難の----者はただちに----さい。」
少し古いテレビから途切れ途切れニュースが耳に入る。私は今、父に手を引かれて近所の小さなシェルターへと向かっている。母は昼に晩御飯の買い物に行ったきり帰ってきていない。
シェルターに着いた。父がもしものためと言って買った3人用のシェルターだ。
「ルシアン、俺はすぐにシェルターに戻るからな。母さんを連れ戻して帰ってくる。必ず。お前はここで大人しくしておいてくれ」
父はそう言い私の額にキスをし、扉を閉じた。
私はここから3ヶ月、1人で過ごす。
ほとんど廃人同様の状態であった。
ただ生きている肉塊。
食料も水も、硬くて汚いがベッドもあった。救急セットや、ラジオもあった。ラジオのおかげですぐに事態は理解できた。
南アメリカのアマゾンから、とてつもない速度で病気が広がった。それは人を蝕み、人が人の血を求めるように変えていった。
そして、私が今いるシェルターから北に巨大なシェルターがあるらしい。
距離にしておよそ300km。
私はそこを目指すことにした。
より安全な、より人間的な、そういったものを求めていたのだろう。
使ったこともないリボルバーや懐中電灯、水や食料、家族写真と、ガスマスク、、使えそうなものは全てバックパックに詰めた。
重くて大きな扉を開けると、そこは開けた大地となっていた。いつか絵本で見たサバンナの絵みたいだ。理解ができた"物体"はただ1つ。
シェルターから10mもないところで、母を抱えて倒れている父の亡骸であった。
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