世界を映す、手のひらの夢

たった一つの「じゃんけん」という遊びに、人の心の奥底にある迷いと純粋さが、やさしく描き出されています。

誰もが「先に手を出せない」世界の寂しさを知りながら、そこに「打算」という影が差し込むことを憂いている……。

それでも最後に響く「じゃ〜ん、け〜ん、ポン!!」の音は、複雑なすべてを一旦忘れ、ただ無垢な衝動へと帰ろうとする、清らかな願いのように感じられました。

じゃんけんという小さな瞬間から、これほど深く、そして美しい問いを引き出せる筆力に、心から感動する……そんな一編です。

(かげき派さま、おかえりなさい)